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秘密保持契約(NDA)を基本的な知識から実務的な対応方法まで学ぶ


2月20日、オープンイノベーションフィールド多摩 国分寺館で、ものづくりスタートアップ企業・中小企業の経営層の方や他社との共創・協働を検討している方に向けて、専門家より秘密保持契約(NDA)を学んでいただくセミナーを開催いたしました。
※秘密保持契約は、英語で「Non-disclosure Agreement」と表記され、その頭文字を取ってNDAと呼ばれます。

今日では、秘密保持契約書を適切に理解し運用することが、ビジネスの成功と信頼関係の構築に欠かせないものとなっています。
秘密保持契約書の基本的な知識から実務的な対応方法まで学ぶセミナーを、参加レポートとしてポイントをまとめましたので、お読みください。


■講師紹介




東京都知的財産総合センター 知財戦略アドバイザー
星 克宏 氏

経歴
・1985年~2018年
総合電機メーカー知財部門知財法務、知財契約、著作権、商標、意匠、ブランド戦略等に従事
・2018年~
東京都知的財産総合センター
主として技術契約関連及び商標・意匠・著作権の相談対応、セミナー講師に従事
・その間、(財)知的財産研究所にて主任研究員を経験


■プログラム

・秘密保持契約とは
・なぜ秘密保持契約が必要か、締結が必要なケース
・秘密保持契約を締結する際のポイント
・秘密保持契約について留意すべきリスク
・まとめ



■セミナーのポイント

【契約書作成実務における一般的留意事項】
星氏は、まず契約書全般において以下5点の留意を伝えました。
・契約書の目的を理解する
・ビジネスを理解する
・相手方を理解する
・将来起こり得るトラブルを読んでリスクヘッジを取り込む
・契約書ひな形の鵜呑みは避ける
・過去の契約書の使い回しは避ける


【営業秘密、技術情報流出事件が多発】
過去の大きな情報漏洩事件とその後の刑事罰と民事罰、今年度に発生した3件の流出事件が取り上げられ、事件が頻繁に発生していることが伝えられました。


【営業秘密の法的保護】
企業が秘密として保有している技術上、営業上のすべての情報は[企業秘密]として民法により保護されます。
[企業秘密]のなかで「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有効な営業上、技術上の情報で、公然と知られていないもの」が[営業秘密]です。[営業秘密]は不正競争防止法により手厚く保護されます。


【不正競争防止法における営業秘密とは】
不正競争防止法上の[営業秘密]として法的に保護を受けるために3要件が必要です。「秘密管理性」、「有用性」、「非公知性」の3要件すべてを備えた情報が[営業秘密]として扱われます。

「秘密管理性」とは…情報に接することができる従業員等にとって秘密だとわかる措置がとられていること。企業としては可視化することが必要
「有用性」とは…情報自体が客観的に事業活動にとって役立つものであること
「非公知性」とは…情報の保有者の管理下以外では、一般には入手できない状態にあること

星氏は、「秘密管理性」には、企業としては可視化することが必要と強調していました。


【不正競争防止法による営業秘密の法的保護】
法的保護には2つのポイントがあります。
・不正競争防止法違反の内容が悪質であれば、民事的措置だけではなく、刑事的措置に追究できる
・契約がなくても、不正競争防止法違反の事実があれば、相手の責任を追及できる


【開示する技術情報、営業情報の区別】
開示する技術情報・営業情報は2種類あります。
契約があれば開示する技術・情報は、「ビジネス遂行上開示が必要な情報」であり、
その中でも、
・多数の従業員がアクセスする情報
・一部の従業員のみにアクセスが許される情報
と重要度に応じて2種に分けられます。

また、契約があっても絶対開示しない技術・情報として「門外不出の技術・情報、ビジネススキーム」があります。
こちらは、社内でもアクセスできる人間も一部の幹部に限定されます。


【秘密保持契約の留意点】
留意点は「必要性」と「契約のポイント」の2つがあります。
1、    秘密保持契約の必要性
・秘密情報開示に伴うリスク回避
 (第三者への漏洩リスク/多目的使用・流用リスク)
・「営業秘密」として不正競争防止法による保護を受けるための条件

2、秘密保持契約の主なポイント
  ・情報開示(契約)の目的を明確にする
  ・秘密情報を特定する
  ・秘密情報から除外する情報を明確にする
  ・秘密保持義務の内容を明確にする
  ・秘密情報の他目的使用を制限する
  ・秘密管理を徹底する
  ・知的財産の取扱いを定める
  ・契約期間と守秘期間は区別する


【秘密保持契約について留意すべきリスク】
留意すべきリスクは4つあります。
・秘密情報の範囲が曖昧であると自社情報まで制約を受けるおそれ
・受領した他社情報は自社情報とは区別して管理しないと情報の混在をまねき、
自社情報の使用が制約を受けるおそれ
・秘密保持義務違反は、不正競争防止法上の「営業秘密」の侵害責任を問われるおそれ
(民事罰だけでなく刑事罰も)
・下請等の第三者への情報開示は第三者の義務違反に対する管理責任を問われるおそれ


■まとめ

セミナーを通して、星氏は秘密保持契約(NDA)に関して、事細かに解説されました。また参加者も、秘密保持契約(NDA)を学ぶことに確固たる目的を持たれた方が多かったです。今回は、伝える側も学ぶ側も真剣で引き締まったセミナーとなりました。

今後もOiFでは、様々な内容のセミナー、イベントを企画してまいります。皆様のご参加をお待ちしております。



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