画像の鮮明化・復元高解像度化の技術を持ち、週刊東洋経済の特集「すごいベンチャー100 2024 DX部門」にも選出された株式会社ロジック・アンド・デザイン。少人数かつ平均年齢56歳という会社が世界初の商品を開発し続けることができる理由、イノベーションを起こす秘訣などを会社の経営戦略を踏まえてお話しいただきました。
■プログラム
1.「画像鮮明化技術」に着目した背景とその将来性
2.6ヶ月以内に世界初の商品を開発しつづけられる理由
3.社員平均年齢56歳のシルバー・ベンチャーがなぜイノベーションを起こすことができるのか
4.市場を拡大するロジック・アンド・デザインの販売戦略と事例
5.オープンイノベーションに挑戦したい経営者へのメッセージ
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1.「画像鮮明化技術」に着目した背景とその将来性
株式会社ロジック・アンド・デザイン(以下、LAD)は、「すべては“より視える化”のために」を掲げ、画像鮮明化技術の開発を行う企業です。この技術に注目した背景には、佐藤さんが眼科系や医療業界に長く携わる中で、視認性の向上が医療やそれ以外の分野で多くの課題を解決でき、世の中の役に立つのではないかとひらめいたことがあります。
画像鮮明化技術は、単なる画質向上ではなく、「本来あるべき姿を見せる」ことに重点を置いています。これにより、警察・防犯・監視用途から、医療、インフラ、ドローン、AI解析補助まで、さまざまな分野に応用が可能です。特に、カメラのセンサーに直接組み込める半導体技術を開発しており、世界でも類を見ない最先端の技術を提供しています。
2. 6ヶ月以内に世界初の商品を開発しつづけられる理由
LADの最大の強みは「圧倒的なスピード感」。通常、製品開発には長い時間がかかるものですが、LADは明確な開発方針と市場分析に基づき約6ヶ月で製品化を実現しています。事業戦略を明確にし、開発の方向性を迅速に決定することで、効率的なプロセスを構築しています。さらに、最新技術のトレンドや市場ニーズを常にキャッチし、適切に反映することで、時代の変化に対応できる体制を整えています。
また、技術者の経験とスキルを最大限に活かし、短期間で試作から改良までを繰り返すことで、迅速な開発を可能にしています。大手企業のように複雑な階層構造を持たないフラットな組織体制により、意思決定のスピードも格段に速くなっています。これにより、開発から市場投入までのプロセスが短縮され、競争力のある製品を迅速に提供できます。
LADはオープンイノベーションを積極的に活用し、外部パートナーとの協業を推進しています。大学や研究機関、企業との連携を進めることで、技術力の向上を図るとともに、他業界の知見を取り入れ、新たな応用分野を開拓しています。このようなパートナー企業との連携が、LADの開発スピードと技術革新を支えています。
そして、試作・検証・改良の高速サイクルを確立し、独自の技術力を活用して最短期間で試作品を開発、顧客やパートナーからのフィードバックを即座に反映することで、より完成度の高い製品へと進化させています。こうしたプロセスの積み重ねが、短期間での製品化を可能にしているのです。
3.社員平均年齢56歳のシルバー・ベンチャーがなぜイノベーションを起こすことができるのか
LADは「シルバー・ベンチャー」として、経験豊富なシニア層が主体となって活躍しています(ちなみに最新の平均年齢は1歳若返って55歳だそうです)。一般的に、シニア層の企業は保守的になりがちですが、LADがイノベーションを起こし続けられるのは、各分野のエキスパートが集結していることにあります。事業開発、マーケティング、技術開発の経験値の高い専門家たちが経営戦略を十分理解したうえで意見を交わし、それぞれの知見とそれまでに培った広範囲のネットワークを活かしながら、製品技術開発を具現化しています。
また、スピード感を重視した意思決定が可能であることも大きな強みです。豊富な経験に裏打ちされた迅速な判断が可能であり、無駄のない開発体制を維持できるため、タイムリーな市場投入が実現します。
新しい技術に対する柔軟性を持ち続けることも、LADの革新を支える要素とのこと。AIや半導体技術のような最先端技術にも積極的に取り組み、常に新しい挑戦を続けているそうです。
4.市場を拡大するロジック・アンド・デザインの販売戦略と事例
LADの販売戦略のポイントは、「持続的競争優位性を継続的に確立すること」です。そのために、まずメディアや展示会を積極的に活用し、認知度向上を図っています。展示会やピッチコンテストに参加することで、LADの技術の価値を直接伝え、多くの企業や関係者との接点を増やしています。加えて、マスメディアとの協力により、実際の事件や災害の映像鮮明化に貢献し、その技術力を広く知らしめています。
また、オープンイノベーションを活用して市場開拓を進めています。大手企業や大学との共同開発を進めることで、新たな活用分野を広げ、より多くの業界へと参入する道を切り開いています。このような協業を通じて、技術の応用範囲を拡大し、市場を広げていく戦略をとっています。
さらに、LADは顧客のニーズに応じたカスタマイズ可能なソリューションを提供することにも注力しています。AI、防犯、医療、産業用途など、多様な分野の要望に柔軟に対応し、それぞれに最適な製品を開発しています。こうした柔軟性が、多くの企業にとって魅力的な要素となり、警察、防衛、医療、産業などさまざまな業界での採用が進んでいます。
5.オープンイノベーションに挑戦したい経営者へのメッセージ
佐藤さんの言葉を借りると、オープンイノベーションは「“人の褌”=他力作戦」。勿論いい意味で仰っています。
トータル・ソリューションで提供する場合、自社の製品技術だけでは限界がある。LADはできるだけ持たないファブレスメーカーのようになるべく身軽にする代わりに、人(他社)に頼っていろいろやってもらう、お互いが足りないものを補完しあう、というやり方でスピード感ある製品技術提供を実現しています。
自分たちの製品技術だけでは限界があるということを認めながら、多彩な人財を活かすことと人(他社)の力を借りることがLADのコアバリューになっています。
まずは自社の事業戦略や目標を明確にすること。そして、垣根を越えて他力=人の褌で補完すべき技術や製品アイデアと自社の人財を最大活用することが短期間で成果を出し続ける秘訣と言えますね。
最後に
「“人の褌”=他力作戦」の部分、言葉の表面だけ見ると誤解する人もいるかもしれませんが、オープンイノベーションの定義を「社内外の垣根を越えてアイデアや技術を取り入れ、新しい価値を創造するイノベーション手法」とするならば、わかりやすくて的確な日本語表現と言えますね。
ただ、佐藤さんは「人の褌」で成果を出すことのみを良しとしているのではなく、「お互いwin-winになること」と「人の幸せに役立つこと」が重要なテーマ、と仰っていました。
また、社員平均年齢が50代半ばということだけを聞くと驚くかもしれませんが、一昔前と違って現在の50代半ばといえば経験・知見もありネットワークも広く、やる気に満ちている方が多いですよね。まだまだ現役の即戦力にもなりますので、年齢だけで判断するのではなく会社としてその方の経験値をどう活かすかを改めて考える価値はあるのでは?と感じました。
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今後もOiFでは、様々な内容のセミナー、イベントを企画してまいります。
皆様のご参加をお待ちしております。
■講師紹介
株式会社ロジック・アンド・デザイン 代表取締役 佐藤公明氏
●1975年に渡米(カリフォルニア)、ジュニア・カレッジ卒業後帰国し立教大学に編入
●卒業後トヨタ自動車系広告代理店11年勤務、その後再び渡米。以来外資系消費財・医薬部外品・OTC/医療用医薬品・医療機器メーカー3社で約20年経営陣として勤務。
●その後大手コールセンターの医薬品開発支援(CRO)事業部を分社・子会社化を実施。前線のニーズと経営的観点とのブリッジングを環境分析と戦略的中期計画策定プロセス(“OGSM”)をセットにしたマネジメント手法を用いて具現化、幅広い業態でのStart-up, Turn-aroundを実現。
●10年前の還暦で一度現場から引退し「早い・安い・上手い」のコンサルタント会社を先輩と設立。
●2年後にOne&Onlyの技術(非AI処理の画像鮮明化及び復元高解像度化アルゴリズム)をベースに市場のunmetニーズを短期間で製品化出来る技術開発者と出会い、シルバー・ベンチャーの株式会社ロジック・アンド・デザインを設立して現在に至る。
●元明治大学講師(青年社長育成講座マーケティング)
●東京銀座ロータリークラブ会員
著書:「人生でいちばん大切なことはマーケティングで学べる~5年ずつ自己実現する生き方~」(2007年 新風舎)
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