2023年10月6日 オープンイノベーションフィールド多摩 国分寺館 のOPENを記念し、開催
2023年10月6日にオープンイノベーションフィールド多摩 国分寺館のオープンに合わせて開催したイベント「ものづくりで新しい価値を創造する」のレポートをお届けいたします。
コネクテッドロボティクス株式会社 代表取締役 沢登 哲也氏と、株式会社LOAD&ROAD 代表取締役 河野辺 和典氏のおふたりにご登壇いただきました。
【登壇者】
沢登 哲也氏
コネクテッドロボティクス株式会社代表取締役
東京大学工学部計数工学科卒業。京都大学大学院情報学研究科修了。 外食企業にて新規飲食店の立ち上げと既存店舗の再生に携わったのち、マサチューセッツ工科大学発のベンチャーでロボットコントローラ開発責任者を担当。2011年に独立後、産業用ロボットコントローラの受託開発の経験を経て、2014年にコネクテッドロボティクス株式会社を創業する。 2017年4月、飲食業に特化したロボットサービス事業を構想し、Startup Weekend Roboticsで優勝。 以来「食産業をロボティクスで革新する」をテーマに食産業を革新するテクノロジーの開発販売事業に取り組んでいる。
東京都主催:Tokyo Contents/Solution Business Award 2022」奨励賞を受賞。惣菜盛付ロボット「Delibot」が第10回ロボット大賞にて中小・ベンチャー企業賞(中小企業庁長官賞)を受賞など受賞歴多数。独立行政法人 中小企業基盤整備機構 農工大・多摩小金井ベンチャーポート
河野辺 和典氏
株式会社LOAD&ROAD 代表取締役
千葉大学工学部を卒業後、ロボット関係の仕事に従事。世界規模の起業をしたいという思いから、退職してアメリカBabson CollegeのMBAプログラムに入学。MBA在学中の2015年に、インド出身のクラスメイトとともに、新しいお茶の楽しみ方を提案する「teplo」ブランドで起業。AI搭載のティーポットや茶葉販売ECなど、 ハードウェア、ソフトウェア、食に関わるサービスの開発と提供を行なっている。世界初のパーソナライズ抽 出機能を搭載したIoTティーポット 「teploティーポット」の開発、サービス展開を実施。 東京都主催ベンチャー技術大賞
トークテーマ ものづくりで新しい価値を創造する
□プロトタイプラボについて
冒頭で国分寺館のプロトタイプラボについて、お二人の感想を伺いました。
【沢登氏】
3Dプリンターは高額、試作品のための消耗品も金額的負担になる。素早くプロトタイプが作成できるのはスタートアップの際にとても助かる。
【河野辺氏】
設計会社と同等のソフトウェアの導入となると数百万する。30分単位でそれが使えて、隣に金属や樹脂が加工できる3Dプリンターがある。使わない手はない。
この後、いよいよトークイベントの本編がスタートしました。
■アイデアから試作開発へのプロセス
【沢登氏】
自身のバックグラウンドを見つめなおすことを提案。
自分のルーツは飲食とロボットの二つ。
飲食の場でロボットが活躍できるのではないかというアイデアから、まずは簡易で安価な試作品を作成。ロボットを使って食品を作る試みにチャレンジし、食品の種類や幅を徐々に広げていった。
【河野辺氏】
留学時にお茶の価値を再発見したことをきっかけに、人の経験や勘に頼っている「おいしいお茶の入れ方」を、エンジニアリングの経験から数値制御することはできないかというアイデアからはじまり、ネットなどで買った安い素材や部品等から製品化に必要なものを探り当てて試作品作成。製品化のめどが立ったら次にデザインを考える・・というプロセスを経て商品化していった。
■仲間、サポーターの集め方
【沢登氏】
企業イベントに参加して仲間が集まったが、別途、経産省の「始動」プログラムにも参加しパートナーを見つけた。場も大事だがミッションとビジョン=情熱を言語化して伝えることも大事。共感を得ることで仲間集めに結び付く。
【河野辺氏】
留学先のクラスメイトにアイデアを話し、共感するメンバーが集まるまで話し続けた。
情熱やアイデアを話し続けることで横のつながりが広がり、興味を持つ人を紹介してもらえ、仲間を集められた。
資金力があれば優秀な人を雇うことも可能だが、資金に限りがあったスタートアップ時には前述の方法がベストだった。
■資金調達方法の具体例
【沢登氏】
政策金融公庫の創業支援制度を利用。その他の投資プログラムも利用し、創業期を乗り切った。
ハードウェアを扱うのであればなおさらお金は先立って調達することが必要になる。
また、キャッシュフロー経営も重要。
【河野辺氏】
思いつく手段すべてを使って資金調達すること。トレンドを逃さないようにしつつ、トレンドに流されないように注意し、キャッシュアウトを減らす=必要のないところには使わないマネジメントをすることで資金管理をすることも重要。
■試作開発の際に直面した課題とその解決策、失敗事例から得られた教訓と改善点の共有
【沢登氏】
様々な調理や食品加工の現場でロボットを活用する事にチャレンジしてきたため、失敗も多く経験しているが、その過程で技術面や市場認知度は積みあがった。
失敗に対しては検証に力を入れるべき。
また、失敗を機にターゲットとするマーケット変更の検討も必要になる。
アイデアを生かすため、技術とマーケットの可能性の両方を見極めて判断することが重要。
商品開発を止める判断は難しいが、早めに見極めて勇気をもってやめる決断をしないといけない。
決断が遅れるほど失う労力や時間、資金は大きくなる。
マーケットがわからないなら早いうちに安いプロトタイプを作成し現場で動かしてみて、判断材料としてミクロからマクロまであらゆる情報を収集することが一番重要。
ネットで拾ったマーケット情報にはあまり意味がない。
【河野辺氏】
チームに技術力があると、製品に機能を盛り込みすぎて、商品としては使いづらくなるし価格が上がってしまう。そこがエンジニア集団である我々の毎回の課題。
軌道修正には、まず、エンジニア視点で良いと思う機能を盛り込んだ試作品を作成し、エンドユーザーの立場の人に使ってもらう機会をもうけて、実際に製品が使用される現場を観察する。
使った人から使用感や改善提案をヒアリングすることで、エンジニアの気付かない細かな改修点がでてくるので、それをもとに軌道修正をする。
ここでテーマに沿ったトークイベントはいったん終了し、来場された方との質疑応答にうつりました。
□質疑応答
Q.「teploティーポット」について。「好みに合わせてお茶を入れる」とのことだが、個人の好みにどのように合わせるのか?
A.【河野辺氏】
お茶は嗜好飲料。個人の味覚、好みは数値だけでは制御できないため、ユーザーからフィードバックを返せるようサービスとして設計している。フィードバックに基づいた条件や、茶葉や季節といった抽出条件を適宜アップデートできるような仕組みにしている。
Q.新しい価値とはどういうものか?
A.【沢登氏】
つらい労働をなくす、人手不足解消、生産性の向上、最終的にはおいしくて健康的なものを皆に楽しんでもらうということを価値と定義している。
生産性をあげ、食品をよりおいしく健康的ものにすることが価値になる製品を出していくことを目指している。
ハードルが高く、ロボット化が進んでいない飲食・食品加工の分野に突破口を開くことが価値になるし、
製品の寿命がどんどん短くなっているなか、前述のビジョンに沿った価値のある製品を次々に出していくことが重要と考えている。
■ものづくりに携わる中小企業事業者や起業家へのメッセージ
【沢登氏】
年々、ものづくり、スタートアップを取り巻く環境は良くなっている。
ぜひ、この良い環境やプロトタイプラボのような施設をフルに活用して、今までできなかったことにどんどんチャレンジしていってほしい。
新しい価値を一緒に創造していきましょう。
【河野辺氏】
ものづくり周りの資金調達面の環境は決して良くない。
一方で国や都といった「官」の助成金や施設といったサポートは手厚い。
そこを活用して日本でいいものを作っていく必要がある。
スタートアップの際には「官」「民」両方のサポートをうまく使ってバランスよく事業を進めるのが良いと思う。
せっかくものづくりをするのであれば、身近にプロトタイプラボのような施設があるので、小さなものでもアイデア段階のものでも、一度試作品を作ってみることをお勧めします。
自分が作ったものを見てもらい、触っている人の表情を見るだけでも、ものづくりの貴重な体験です。
□編集後記
トークイベント後はOiF国分寺館の施設見学会を実施しました。
労政会館時代をご存じの方からは「キレイになった!」とのお声もいただきました。
見学会に参加された方々が一番興味を持たれたのは、やはり1Fの「プロトタイプラボ」でした。
短い時間でしたが、皆さん、専属の指導員に熱心に質問をされていました。
施設見学会終了後に、登壇者様と直接お話しできる交流会の時間を設けました。
沢登さん、河野辺さんお二人ともとても気さくに、時間の許す限り丁寧に、参加者様からの質問などにお答えいただきました。
参加された皆様には有意義な時間になったと思います。
お答えいただいたアンケートにはオープンイノベーションフィールド多摩へのご期待のお言葉を多数頂戴いたしました。
多摩地域等の中小企業の皆様や地域の皆様にとっての活動拠点の一つになれるようにこれからもイベントやセミナー・交流会の企画をしてまいります。