はじめに
世の中には、不安・不足・不便・不幸・不快といった様々な「不」が存在する。
事業とはそれらの「不」を解消して結果として収益を得ることであり、誰のどんな「不」を解消するかが曖昧なままでは新規事業は立ち上がらない。
「脱下請け!1社依存からBtoCに転換した事業が軌道に乗るまで」セミナーは、売上の安定化に悩む中小企業経営者を対象に開かれました。
講師の株式会社ハーツ山口氏は、あらゆる困難と逆境を乗り越えながら、BtoC市場へ挑戦したことで、「脱・下請け」による新しい事業を確立させました。
1.脱・下請けを決意した経緯 -まずは行動する-
山口氏が下請けからの脱却を決めた背景には、運輸業界全体の構造的な課題がありました。
ドライバー不足や燃料価格の高騰、そして1社依存の受注体制。
取引先の経営状況に大きく左右される不安定さが、企業の未来を危うくする――。
そんな体験を通して「自ら価値をつくる事業」を模索し、行動を起こしました。
2.BtoBからBtoCへの転換 -新規事業への挑戦と覚悟-
山口氏は数々の困難を乗り越えながら、BtoBからBtoCへの挑戦を成功させました。
その過程で培った教訓と経験が、今後のさらなる成長の基盤となっています。
• BtoBからBtoCへの挑戦
ある時期に売上の大半を占める重要な取引先を失うという危機に直面しました。
この危機を乗り越えるために、山口氏は自らを奮い立たせ、毎日、新聞や業界誌を読み、ラジオを聴くことで、最新のトレンドや成功事例を学びました。
その中で、時間制の料金体系を考案し、自社のサービスに適用することを思いつきました。
• 新規アイデアのきっかけは‘意外な依頼
BtoCの市場に一歩踏み出したことで、「既存のサービスでは運送対応できない、鳥人間コンテストの機体を運んでほしい」という予想外の依頼が舞い込みました。
この依頼こそが、従来のBtoBの枠にとらわれない新たな視点を得るきっかけとなり、自社サービスが立ち上がります。
• 継続的な進化への意識
サービスの軸は、「レンタカーの自由さ」+「引っ越しの安心感」。明確な料金設定と運転手付きの利便性を武器に、徐々に知名度を高めました。
さらに1つの新規事業の成功を土台に、特定のニーズに対応したサービスを次々と展開しました。
またスタッフ教育に注力し、「嘘をつかない」「素直である」ことを教訓に、社員が誠実に対応することで、顧客満足度の向上につながると信念を持っていました。
3.山口氏が経験から語る -人の繋がりの大切さ-
山口氏が苦難を乗り越えてきた裏には、信頼できる多くの経営者の仲間がいました。登壇後の質疑応答では、『人の繋がりの大切さ』について、熱く語っていただきました。
• 目の前の人を大切にする
まず目の前にいる人々、特に先輩や目上の人を大切にすること。
これは自分を取り巻く環境を整え、自分を支えてくれる人間関係を築くための第一歩でした。
• 貴重なアドバイスを得る場
中小企業の経営者の会や商工会議所などの集まりに参加し、そこで出会った人々から相談やアドバイスを受けました。
その中には、ある著名な創業者もおり、深いつながりを築くことができました。
• 熱意を持って行動する
多くの人がいる中で、自分を覚えてもらうためには、他の誰よりも熱心であることが重要であり、こうした熱意が相手に伝わることで、様々な機会に恵まれ、人脈が広がりました。
• 失敗から学ぶ
先輩たちが経験した失敗を聞くことは、自分自身のエネルギー源となりました。
失敗を恐れず、むしろそれを学びの機会として捉えることで、自分の成長につなげました。
• 人脈の構築:
熱意と誠実さを持って接することで、十人の仲間が集まり、経営者を支えてくれる環境ができました。
これは単なるビジネス上の関係ではなく、本当に助け合うことのできる信頼関係として築かれました。
4.総括:サービスへの想い -常に変化-
サービスの良さを信じきると「相当の覚悟」が幾度となく生まれ、「忍耐力」が湧いてくる。打ちひしがれても夜は必ず開けると信じられること。
同時に新規事業は不確実であるため、その不確実性のある事業に挑戦するという認識と、それを乗り越えるための強い精神力を持たなければならない。
『お客様に対して、模倣会社に対して、社内のモチベーションに対して、全てを牽引するのは『常に進化しようとする絶えない想い。』である。
決して、どんな新規事業も始めから、うまくはいかない。その中で、現状に依存することなく、常に行動し、変化し、経営者自身が主体となって取り組むことが、道を切り開く――。
山口氏の熱意ある語り口からは、「変化し続ける勇気」と「行動し続ける大切さ」が伝わってきました。
成功の裏には、地道な努力と、仲間の信頼構築があります。
このセミナーは、中小企業に働く全ての方々にとって、現状から脱却するための一歩を踏み出す勇気を与えてくれる機会となりました。
株式会社ハーツ 代表取締役
山口 裕詮(ヤマグチ ヒロアキ)氏
- 1969年、函館生まれ
- 大手運送会社で経験を積み、1995年に有限会社ハーツを創業しBtoBの下請け配送サービスを展開
- 経営危機を経てBtoCの引っ越し業界に参入、業界初の運転手付きレンタルトラックサービス「レントラ便」を開発
- 東京商工会議所「勇気ある経営大賞ファイナリスト」「イノベーション創出事例企業2022」知財経営モデルの創出企業100社」 認定
- 経産省「中小企業IT実践企業」 認定
- 「2020年 中小企業白書 「新たな価値を生み出す中小企業」にて事業モデル紹介
今後もオープンイノベーションフィールド多摩 国分寺館では多摩地域の中小企業の皆様にとって有益な情報を届けてまいりますので、足をお運びください。