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将来の資金力をつくる!今から始める価格交渉


はじめに

8月20日(水)、オープンイノベーションフィールド多摩八王子館にて、「将来の資金力をつくる!今から始める価格交渉」が開催されました。
本セミナーでは、経営支援部シニアコンサルタントの北島大輔氏(『相手が納得する!「中小企業の値上げ入門」』著者)を講師として迎え、原材料費高騰やエネルギーコスト上昇に直面する中小企業経営者を対象に、価格転嫁の実践的手法について詳しく解説いただきました。


1. 値上げの必要性と業績への影響


国の価格転嫁支援体制の現状

法整備が進められ、国レベルでの価格転嫁支援が強化されています。受注者からの値上げ要請の有無にかかわらず、多数の取引先に対して協議を経ない取引価格の据え置き等が確認された事業者について、独占禁止法に基づき事業名を公表するなど、適正な価格転嫁を促進する環境整備が進んできています。

値上げの業績インパクト

実際のデータを用いた分析では、製造業において平均単価を1%値上げすることで、約4%の賃上げや約2%の材料費上昇に対応できることがわかります。材料価格が20%増加し、5%の賃上げを行う場合には、少なくとも10%程度の値上げが必要だといえます。


2. 値上げ失敗事例と成功のポイント

よくある失敗パターン

北島氏は値上げ交渉で失敗する典型的なパターンとして以下を挙げました。

•    一方的な値上げ通知のみで理由の説明がない
•    値上げ交渉後の営業担当者の来社頻度低下
•    製造原価を正確に把握できていない適正価格の算出を誤る

これらの失敗により、取引解消や取引シェア減少に至るケースが少なくありません。

成功企業の取り組み


一方で、価格転嫁に成功した企業の特徴として、以下の要素を紹介しました。

•    製品別・顧客別の詳細な原価管理の導入
•    顧客の価格転嫁許容度と自社製品の優位性分析
•    利益から逆算した戦略的価格設定
•    顧客との継続的な関係構築


3. 実践的な価格交渉手法


顧客セグメンテーション戦略

顧客を「価格転嫁許容度」と「製品優位性」の2軸で分類し、8パターンの交渉シナリオについて詳しく解説しました。製品別限界利益がマイナスまたは低水準で、製品優位性があり、顧客の価格転嫁許容度が高いケースでは即座に値上げ交渉を開始する一方、優位性がなく許容度も低いケースでは取引解消も含めた戦略的判断が必要とされます。


4. 担当者の育成と社内体制構築

社内浸透の3要素

転嫁を成功させるためには、「意識させる機会」「知る機会」「学ぶ機会」の3つの要素を組み合わせ、社内浸透を図ることも大切です。
人事評価制度への組み込みや月次試算表による見える化、定期的な研修会開催も効果的です。

交渉エキスパートの育成

営業担当者の不安を軽減するため、社内に「価格転嫁交渉のエキスパート」を育成し、交渉難易度の低い得意先から場数を踏ませる手法がオススメです。営業部長、担当役員などがエキスパートとなって場数を踏み、必要に応じて営業担当に同席するようにするなど社内の体制構築も進めていきましょう。


まとめ

講師からは最後に、「価格転嫁は単なる『お願い』ではなく『交渉』である」というメッセージが伝えられました。客観的で合理的な根拠に基づく資料作成、顧客との信頼関係構築、そして全社的な戦略課題としての取り組みが成功の鍵であることが強調されました。

セミナー終了後、参加者からは「具体的な交渉シナリオが参考になった」「営業担当者の情報力と取引先と関係性の重要さがよくわかりました」といった感想を寄せていただくことができました。

インフレ環境下で利益確保に悩む中小企業にとって、本セミナーが「1円でも多く価格転嫁を実現する」ための実践的な指針になっていれば嬉しく思います。



株式会社新経営サービス シニアコンサルタント
北島大輔氏

  • 前職は銀行で中小企業向け法人融資の営業職。
  • 主に顧客企業への融資や定期訪問によるアドバイスを通じた財務体質の改善に従事し、
  • 顧客企業の経営課題解決にもっと深く関わりたいという思いから、現職へ。
  • 現在は、中小企業の業績向上、財務体質の改善、価格転嫁、予実管理・原価管理等の導入を支援。
  • 財務テーマを中心に「経営課題を解決するための仕組みづくり」と「幹部・社員が主体的に動く仕掛けづくり」を支援。
  • 経営者・幹部だけでなく、社員一人一人とコミュニケーションを図り、課題解決を推進する支援スタイル。
  • 『相手が納得する!中小企業の値上げ入門(あさ出版)』の著者



 
 
今後もオープンイノベーションフィールド多摩 八王子館では多摩地域の中小企業の皆様にとって有益な情報を届けてまいりますので、足をお運びください。


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