はじめに
4月25日(木)にOiF八王子館で実施したイベントの内容をお届けしています。
気になっていたけど申し込めなかった、OiFってどんなイベントをやっているのかなど、ご興味のある方は是非ご一読ください。
SNSが普及した昨今、労務のトラブルがSNS上で拡散されてしまい炎上、企業のイメージ悪化に繋がってしまうケースも少なくありません。まず労務トラブルを起こさないためにどうすればよいのか、本イベントではTMI総合法律事務所 弁護士堀田 氏をお招きし、経営者や人事担当者の方々に向け、人事制度改善のために必要な労務知識についてお話しいただきました。
1.労務トラブル事例
中小企業に多い労務トラブルの事例をいくつか紹介します。労務トラブルはやむを得ないケースも多々ありますが、事例を学び、トラブルが起きない為の予防策を知っておくことが大切です。
業務命令の拒否
• 発生背景:業務分担が不明確なため、担当外と認識して業務命令を拒否する事例が発生
• 結果:チーム内での混乱や業務停滞を招く
• 対応策:業務範囲を文書化し、役割と責任を明確に周知する。新規案件ごとに役割確認のミーティングを実施する
勤怠不良
• 発生背景:勤怠管理ルールが徹底されておらず、遅刻や無断欠勤が慢性化
• 結果:他従業員への悪影響や職場の士気低下
• 対応策:出勤簿と連動したシステム導入と、毎月の出勤状況レビュー面談を実施
職場秩序の破壊
• 発生背景:新任上司に対する公然たる批判や対立
• 結果:職場の統率力が低下し、部門間連携も悪化
• 対応策:コミュニケーション研修の実施と、内部通報制度の整備
2.労務管理における課題
企業全体の信頼性や安定性に深刻な影響を及ぼさない為にも、現在の労務管理を定期的に確認することが大切です。中小企業はその規模によるメリットも多くありますが、下記のようなトラブルの種を抱えてしまうこともあります。もし当てはまる課題があれば、管理方法や運営を見直しましょう。
• 経営者と従業員の距離が近く、感情的な対応になりやすい
• 担当部署が小規模で、規則の整備や運用が後回しになりやすい
• 専門知識を持つ人材が不足し、トラブル発生時の対応が遅れる
• 問題が発生すると、他の業務にも波及しやすい体制になっている
3.トラブル別対策のポイント
前項のような課題から大きなトラブルを生まない、あるいは起こってしまった時のための対策ポイントを抑えておきましょう。労務に対して専門的な知識がなくても、以下のポイントを押さえておくことで、トラブル対策・迅速対応が可能になります。
事前防止
・ 就業規則や服務規律、業務命令に従う義務を明文化し、全従業員に配布する
・ 新任上司やリーダーの着任時には、社内規程ハンドブックを配布し、基本的な規範とコンプライアンス教育を徹底する
・ 勤怠管理ルールやハラスメント防止規程も定期的に周知し、社内研修で意識付けを行う
発生時
・ トラブル発生時には、必ず文書による注意・指導を行い、その内容と対象者の対応を記録する
・ 警告書・注意書・指導記録は、定型フォーマットに沿って作成し、社内サーバーで一元管理する
・ 必要に応じて、第三者立ち合いのもとで面談を実施し、記録の信頼性を高める
対応
・ 問題の性質に応じて、社会保険労務士、産業医、弁護士など外部専門家への早期相談ルートを確立しておく
・ 労働基準監督署や労働局への報告が必要なケースを事前に整理し、スムーズな対応ができる体制を整える
・ 社外相談窓口も活用し、従業員からの内部告発リスクにも備える
まとめ
労務問題への対応は、起こる前の予防に繋がる規則の整備や、社内研修などのインプットも重要です。 万が一トラブルが起こった場合でも、専門機関と連携するなど、迅速かつ適切に対応することで、企業リスクを最小限に抑えることができます。労務のリスク対策安定した経営基盤を築くことができます。本イベントでの知識を是非、皆様の企業運営に取り入れてみてください。
TMI総合法律事務所 弁護士
堀田 陽平 氏
■経歴
- 2016年 弁護士登録(第69期)
- 2017年 鳥飼総合法律事務所入所
- 2018年 日比谷タックス&ロー弁護士法人入所
- 2018年~2020年 経済産業省産業人材政策に任期付き職員として着任
- 2024年 TMI総合法律事務所入所 企業法務、労働関係全般、M&Aを中心に取り扱う。
近時の主な著作等として、以下のものがある。
「Q&A 企業における多様な働き方と人事の法務」(新日本法規)
「副業・兼業の実務上の論点と対応」(商事法務)
「Q&A 実務家のためのフリーランス法のポイントと実務対応」(新日本法規)
「ケーススタディでわかる フリーランス・事業者間取引適正化等法の実務対応」(第一法規)
日経新聞「フリーランス新法施行、『口約束』、『報酬未払い』防げ」(2024年10月29日朝刊)にインタビュ―掲載 日経COMEMOキーオピニオンリーダ―として働き方について情報発信
今後もOiFでは、様々な内容のセミナー、イベントを企画してまいります。皆様のご参加をお待ちしております。