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「紙とExcel管理から一歩先へ」—中小製造業のためのシンプルな生産管理—イベントレポート


中小製造業の現場では、紙やExcelを使ったアナログな情報管理が採用されているとききます。一方で現場の方々は、情報管理、合理化を課題とされていることもまた事実です。

本セミナー「紙とExcel管理から一歩先へ」では、現場主導のデジタル化の手法についてお伝えしました。 グリッターテクノ株式会社の代表取締役山下氏の講演内容から、「自社でも取り入れられるかも」と感じられるようなヒントをレポート形式でお届けします。今回は、導入に至った背景や現場での工夫、他業種での活用例など、幅広い視点からお話しいただいています。是非ご一読ください。


セミナーパート:なぜDXが中小企業によいのか?

講師紹介と導入の背景


山下氏は金属加工業を営むグリッターテクノ株式会社の代表者。東京都八王子市にて現場を運営し、図面や改善レポート、見積などの書類が紙で管理されていることに限界を感じていました。

工程進捗の確認や図面の差し替えがタイムリーにできず、ミスややり直しが頻発していたことから、「紙・FAX・Excelで処理している煩雑な業務をもっと簡単にできないか」と考えるようになりました。まずはGmailやSlack、Google Driveを導入し、ノーコードツールであるNotionの利用を始めました。社内でのIT化を進めてから、プログラミング等の専門知識がなくても現場で通用するツールを模索していきました。

現場のあるある課題を共有

セミナーでは冒頭、参加者が自社の課題を振り返るセルフチェックを実施しました。

•    在庫数を正確に把握できているか?
•    情報が紙・ホワイトボード・Excelなどに分散していないか?
•    図面や受注情報の保存場所を、人に聞かないと分からないことはないか?
•    見積の根拠が追えず、毎回ゼロから作っていないか?
•    技術の伝え方が属人化していないか?

セルフチェックでは5割前後の方が「うちもそうかもしれない」と感じるという結果に、参加者それぞれが抱える課題を目の当たりにしたことで関心が一気

導入のプロセス


グリッターテクノ株式会社では「現場の運営に寄り添う」ことを前提に、次のような段階を踏んで導入を進めました。

•    Step1:Googleドライブで、フォルダを一元管理できるように。
•    Step2:Notionを導入。既存の図面、見積書や受注情報をテンプレート化し、運用開始。
•    Step3:図面PDFや取引先情報を登録し、案件ごとに紐づけ。
•    Step4:スタッフにもアカウントを発行し、進捗報告や日報を共有。

段階的に、情報の一元管理を進めたことで、今の生産状況や売上をすぐに確認することができ、経営者、事務員、現場社員それぞれの業務効率化に繋がりました。

他社事例の紹介

他業種でデジタル化がどのように進んでいるのか、いくつかの具体例を紹介します。

•    個人トレーニングジム:顧客の目標や運動履歴をデータベース化し、トレーナー間で情報を共有。顧客満足度と継続率が向上。
•    着物リフォーム専門店:外注先や職人との連携状況を管理。進捗や納期の可視化により、電話やFAXでの確認が激減。
•    中小製造業(モーター組立):図面・見積・検査記録などを一元化。紙の日報をテンプレート化し、若手スタッフの業務習得がスムーズに。

必ずしもITリテラシーの高い企業だけに限定されているものではなく、中小規模の事業においても情報のデジタル化を成し遂げることができています。運用に合わせたデータベースを構築していくということもデジタル化を進める際に、大切な視点です。

デジタル化ツール導入で実現できた4つの改善ポイント

① 情報の一元化とリンク連携
受注ページから取引先情報、納期、図面、進捗がすべてリンクされており、複数の資料を探す手間が不要に。図面の差し替えも即時反映され、ミスが減少しました。これにより、作業のスピードと正確性が格段に向上しました。

② 技術承継と教育の仕組み化
熟練者のノウハウを動画で記録し、「便利帳」として蓄積。若手が自分のペースで学べる環境が整いました。ベテランの退職や不在時でも、知識が失われずに継承されていく体制が構築できた点は、特に経営者層から評価されました。

③ 現場・事務所・外出先、どこでもアクセス
スマートフォンやタブレットからいつでもアクセス可能に。図面確認や進捗把握が現場で即時にでき、確認作業がスピードアップ。移動中の営業担当や、遠方の協力会社との情報共有も円滑になったといいます。

④ 導入のしやすさと拡張性
直感的な操作性と、無料でも使える機能が導入のハードルを下げています。自社に合わせて自由に設計できる柔軟性も大きな魅力です。テンプレートの流用や拡張も容易で、業務変化に柔軟に対応できる点が中小企業に向いていると感じたという声が多くありました。


ワークパート:実際にツールを触ってみよう

基本ブロックの操作から

今回はNotionを実際に触って、使用感を試していただきました。
文字入力、見出し、チェックリスト、テーブル、画像・動画貼り付けなど、基本機能をその場で体験し、参加者の方々からは「思ったより簡単」「自由にページを作れる」といった感想をいただきました。

タスク管理を可視化する

締切・進捗・担当者を設定したタスクリストを、カレンダーやボードで表示、業務の優先度や遅れを一目で確認できます。進捗の見える化が業務の抜け漏れ防止にもつながり、チームの安心感にも寄与するという実感を持った参加者も多かったようです。

データベースの連携実践

•    タスクと担当者のリレーション
•    顧客・図面・見積・受注の相互リンク
•    トラブル履歴と図面の紐づけで再発防止

情報が「つながる」ことで、チーム全体の認識が統一されるということを体験いただけたかと思います。複雑な表計算ソフトでは難しい「関係性の可視化」が、感覚的に実現できるという点が参加者の方々にもご好評でした。

ダッシュボード作成体験

複数のデータベースを1ページに集約したダッシュボードを作成。「今日の進捗」「月内の見積提出」「担当者別タスク」などが一覧で把握できます。普段の業務にそのまま使える形に近づけることで、参加者の「持ち帰って試してみよう」というモチベーションが高まりました。


最後に


DXのために有用なツールは多々ありますが、導入の際には「現場の声から改善を始める」ことが重要です。
「まずはToDoリストから」「Web記事を保存するだけでもOK」といった手軽な一歩からでもデジタルツールを使ってみる。こうした日々の知識、技術の積み重ねが、現場発信のイノベーションにつながっていきます。
ITやDXに不安を感じている中小製造業の皆様も、自社に合った形で“まずは試してみる”ことから始めてみませんか?



グリッターテクノ株式会社
代表取締役
山下 悟郎 氏

 






 


 

  • 八王子市在住。50歳。妻、息子(10歳)。
  • 2008年~外資系メーカーにてプラント向け省エネ提案に従事。
  • 2022年にサラリーマンから個人事業承継。八王子の金属部品加工業、グリッターテクノ株式会社を承継する。その後2023年、2024年にも小規模の製造業を事業承継し、現在3社の経営を手がける。
  • 1社目を承継した際、昔ながらの紙とFAXおよびExcelでの管理に危機感を覚え、Notionを活用した独自の生産管理システムを開発。現在は3社共通のプラットフォームとして活用している。図面データから管理会計まで一貫したシステムを構築し、PC未経験者でも3ヶ月程度で習得できる使いやすさを実現。複数の町工場を効率的に経営するための事務負荷の低減及び業務の効率化に成功している。
  • この経験を活かし、中小製造業のデジタル化支援や、事業承継に関するコンサルティングも行う。町工場の持つ力を最大化することをミッションに掲げ、中小製造業の支援と事業継続の両立に取り組んでいる。



今後もOiFでは、様々な内容のセミナー、イベントを企画してまいります。皆様のご参加をお待ちしております。


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