進む従業員の高齢化、止まらない円安、激しくなる中小企業の生存競争。多くの課題と壁がある中で、特色ある中小企業が今後も生き残っていくための手段として、オープンイノベーションがあります。自社の既存技術や製品の範疇だけではなく、他社との共創から新たな事業を生み出し、会社の価値を向上していくことこそ、今後の生存競争に打ち勝つために必要なことと言えます。全国でオープンイノベーション支援をしている株式会社eiiconの村田宗一郎氏に語って頂きました。
<講師紹介>
㈱eiicon(エイコン) 常務執行役員/CHRO/地域創生・イノベーション創出支援事業本部 本部長
村田宗一郎氏
■略歴
・2008年関西学院大学卒業後、株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社。
製薬、食品、飲料、総合商社、不動産など幅広い領域の採用支援を担当後、仙台支店の支社長に。
東北6県の採用支援や各種アライアンス締結を推進し、30名以上をマネジメント。
・2020年eiiconに参画。現在、eiiconのオープンイノベーションプログラム総責任者として、地域創生・イノベーション創出支援事業本部を管掌。全国32,000社を超える企業が登録するAUBA(アウバ)を活用しながら、法人企業・自治体へのオープンイノベーション支援に従事。
・2023年12月、Spiral Innovation Partnersとの合弁会社 株式会社XSprout(エクスプラウト)を設立し、取締役に就任。
・経済産業省 九州経済産業局 令和5年度「中小企業とスタートアップのオープンイノベーション 推進検討会」委員。
各種プログラムでのセミナー・講師・メンターやイベントでの講演・ファシリテートなど実績多数。
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■目次
1.自己紹介
2.オープンイノベーションとは
3.オープンイノベーションで何ができるか
4.共創の進め方
5.最後に
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1.自己紹介
村田さんは㈱eiiconで地域創生・イノベーション創出支援事業本部の本部長として、大企業や中小企業、自治体のオープンイノベーション支援を行っています。
全国の企業や自治体と共に新規事業創出をサポートし、多くのセミナーやイベントで講演し、オープンイノベーションプログラムの設計・運営を手掛け、アクセラレーターとしても幅広く活動しています。
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2. オープンイノベーションとは
改めて「オープンイノベーション」とは何か?ですが、オープンイノベーションとは自社だけではなく、外部の企業やスタートアップ、自治体などと協力して新しい価値を生み出す経営手法です。これまで多くの企業は、リソースやアイデアを自社で抱え込み、新しい製品やサービスを生み出す「クローズド・イノベーション」を中心にしていました。
しかし、時代の変化とともに、短期間で市場に参入し、競争力を高めるには外部との連携が必要不可欠になってきています。
18世紀に第1次産業革命が興って以降、現在はIoT・ビッグデータ・AIなどの技術が急速に進歩し、社会・経済の構造が大きく変革する第4次に至っており、歴史的に見ても「イノベーション」によって大きな産業が興る時期に来ています。
この時代を生き残るためには新規事業・サービスの創出の試みは必須とも言えますが、日本は「イノベーション後進国」とも呼ばれ、競争力が低下しているのが現状です。
皆さんの事業は10年後、20年後どうなっているでしょうか。
市場の変化は激しく、予測が困難になっていますが、だからこそ既存の枠組みにとらわれることなく事業を進める必要があるとも言えます。
「新たな価値を生み出すこと」・・・これを実現するには「自社のみで生み出す」か、「共創で生み出す」か、2つしか手法はありません。
オープンイノベーションの目的は、そうした状況を踏まえて他社と「共創」しながら新しい価値や市場を生み出すことで、持続可能な成長を実現することです。
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3.オープンイノベーションで何ができるか
オープンイノベーションを活用すると、企業は自社だけでは実現が難しいさまざまな成果を上げられる可能性が広がります。
例えば、新しい市場に素早く進出できたり、自社にない技術やノウハウ、そして人材を手に入れることで自社の弱みを補い、強みを強化することができます。
また、競争が激しい業界で、他の企業と協力することで市場全体を広げ、互いの競争力を高めることも可能です。
新規事業を展開している企業の売上は増加しています。
実例としては、A社がオープンイノベーションを活用し、9年間で売上を10倍に拡大したケースがあります。
A社は、社外のアイデアを取り入れてBtoCの新規事業を40以上も立ち上げ、従来の領域だけでなく、新しい分野へと進出しました。
国の後押しもあります。政府は2022年に「スタートアップ育成5か年計画」を掲げましたが、3つの柱の3番目に掲げられているのが、「オープンイノベーションの推進」。
特許庁主導によるモデル契約書の提示やオープンイノベーション促進税制という優遇措置もあるとのこと。
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4.共創の進め方
オープンイノベーションを成功させるためには、まず「共創」のプロセスをしっかりと理解し、一歩一歩進めていくことが重要です。新規事業は不確実なことが多く、既存事業とは前提が大きく異なることを認識することがまず第1歩です。
何を解決したいか、それにいくら出せるかといった「受発注」の関係ではなく、目指したいビジョンを共有して双方にとっての新たな価値創出を目指す「パートナー関係」であることを認識しておく必要がありますね。
共創のステップを整理すると以下のようになります。
(1)計画・準備
まずは、どのような目標を持ってオープンイノベーションに取り組むのかを明確にしましょう。「単に外部と協力する」という曖昧な目的ではなく、何を達成したいのか、どんな価値を生み出したいのかを考え、具体的な計画を立てることが大切です。目標がはっきりしていると、パートナー選びもスムーズに進みます。
(2)面談・連携
次に、パートナー候補との対話を始めます。この段階では、お互いが目指すビジョンをしっかり共有し、双方にとってのメリットを明確にすることがポイントです。ここでの対話を丁寧に行うことで、強固なパートナーシップを築くことができ、共創のプロセスもスムーズになります。
(3)実証実験・実践
いきなり事業化に進むのではなく、実証実験(PoC)を通じて、可能性を検証します。小さな規模から始め、課題や改善点を発見し、成果を積み重ねていくことで、本格的な事業化に向けた道筋が見えてきます。また、進捗を管理し、必要に応じて改善を繰り返すことで、事業化に向けてしっかりと準備を整えていきます。
ゴールを設計し、どのような領域に参入するかをしっかり考えて、このステップで進めていけば、実現したいことに近づいていけそうですね。
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5.最後に
オープンイノベーションは、ただ外部と協力するだけではありません。自社にはない新たな価値を共に創り上げ、競争力を高めるための「戦略的パートナーシップ」です。
企業の成長にとって欠かせない手法ですので、この考え方を活用し、新たなビジネスの可能性を見出してみてはいかがでしょうか。
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今後もOiFでは、様々な内容のセミナー、イベントを企画してまいります。
皆様のご参加をお待ちしております。