DXで業務効率化が必要と叫ばれる現代。デジタル化に着手したものの、思うように業務効率・生産効率が上がらず悩んでいる経営層、担当者も多いのではないでしょうか。CWIT志釜直樹氏を講師に迎え、デジタイゼーションの次のステップであるデジタライゼーションを進めるにあたり、具体的に何をどうやって進めれば効率化を体感できるか。今一度DXについて整理して、業務効率化に向けた次のステップを準備段階からゴール設定までを解説して頂きました。
<講師紹介>
CWIT代表 志釜直樹氏
■略歴
中央大学卒業後、ITベンチャーにプログラマーとして入社。
その後、SEを経て、ITコンサルティング、BPRコンサルティングに従事。
2013年にサイボウズ株式会社入社し、システムコンサルティング本部で、kintone、Garoonの導入支援やカスタマイズプロジェクトのPM、パートナー企業の技術者教育等を担当。
2021年より同社チームワーク総研に所属し、企業風土・組織の変革をIT面で支援する活動に従事。
2024年より電機メーカーにて組織開発の業務に従事。
中小企業診断士(東京都中小企業診断士協会 城北支部所属)
PMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)
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■目次
1.DXとは~もう一度整理して理解する
2.DXが進まない理由とDXの実現で可能になること
3.過去から学ぶ成功事例、失敗事例
4.どう進めるとよいか~デジタイゼーションで終わらないために
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1.DXとは~もう一度整理して理解する
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、ITシステムやツールを導入して業務のデジタル化を進めるだけでなく、企業文化やプロセス全体を見直し、競争力を高めるための組織全体の変革を指します。
DXには3つの段階があることは周知のとおり。
●デジタイゼーション・・・アナログ、物理データのデジタルデータ化
●デジタライゼーション・・・個別の業務、製造プロセスのデジタル化
●デジタルトランスフォーメーション・・・組織横断した全体業務・製造プロセスのデジタル化、価値創出のための
事業やビジネスモデルの変革
これらのステップを理解することで、単なるデジタル化に留まらず、持続的な競争力を生み出す「真のDX」の姿が見えてきます。
DXの定義として大事なのは、「技術やシステムの導入」だけでは不十分であり、組織全体が変わらなければ実現が難しいということ。特に、日本の企業ではこの理解が不十分で、システム導入のみでDXが完了したと誤解するケースが多いようです。
2023年時点で中小企業におけるDXは少しずつ進んでいるものの、「未着手」「デジタイゼーションまで」の取組という企業がまだ60%以上を占めています。
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2. DXが進まない理由とDXの実現で可能になること
他社が導入してうまくいったITツールを、ウチも・・・と事例をただ真似てもうまくいきません。参考にはなっても、どの会社にも当てはまるという事例はありません。百社百様にDXの進め方があります。
自社の課題と実現したいことを考えて、まずは経営層が自社のDXにおける理想を明確にしてから進めること、そしてそれを経営層の中で留めておくのではなく、社内で共有して従業員が理解したうえで、理想に向けて役割を分担していくことが重要になります。
日本の企業でDXが進まない理由には、以下のような点が挙げられます。
①現状維持バイアス:従来の方法や業務プロセスに固執し、変革に対する心理的抵抗が大きい。
②経営層の理解不足:多くの経営層はIT専門家ではないため、DXの必要性を十分に理解せず、表面的なデジタル化に終始してしまう。
③短期的成果を期待する風潮:DXの成果は長期的な視点で評価すべきであるにもかかわらず、数ヶ月単位での成果を求める姿勢が、プロジェクトの中断を引き起こす原因に。
こういったことが起こらないように事前にマインドセットを変革しておく必要があります。
予測が不確実な時代となった現在、①にあるような従来のやり方で大丈夫という考えは今一度考え直した方が良いですね。②については、経営層が常に関心を持って活動を支援する姿勢を見せ続けること、企業戦略とデジタル戦略を紐づけて従業員に理想を共有し続けることが重要、とのこと。③についても経営層は売上・利益といった既存の業務指標とは別軸で、長期戦略の中で進捗を評価することでDXの実現に近づいていける、と志釜さん。
一方で、デジタル変革が成功したケースは16%というデータもありますので、「DXは失敗することが大半」という事実は知っておきましょう。知ったうえで、この失敗を許容していかないとイノベーションが起こりません。失敗を放置して繰り返すのは問題ですが、失敗した原因の振り返りを行なって次のイノベーションを活かす仕組みを作り、心理的安全性を高めてイノベーティブな意見を出しやすい環境を作っていくことでモチベーションがアップし、社内のマインドが変わっていきます。
DXが実現すれば、
• 業務効率化とコスト削減:デジタル化で業務フロー全体の効率が向上し、運営コストが削減
• 新たな付加価値の創出:余剰リソースを活用して新製品や新サービスの開発に注力
• 従業員の働きやすい環境づくり:柔軟な働き方が可能になることで、従業員のエンゲージメントが高まり、優れた人材の確保・定着に繋がる
といった効果が期待できます。
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3.過去から学ぶ成功事例、失敗事例
DXの成功事例として以下の取組を紹介していただきました。(経済産業省の「DXセレクション」から)
• A社:少ない人員で365日24時間の稼働を実現するデジタル技術を導入し、効率化によって余力が生まれた。これを新製品開発に活かし、さらに付加価値のある事業にシフトした。
• B社:既存の業務をデジタル化し、省力化を進めたことで働きやすい環境を整備。これにより、子育てをする従業員も働きやすくなり、従業員の75%を女性が占める職場を実現。効率化だけでなく、働き方の改善や企業文化の変革にも取り組み、エンゲージメントを向上させた。
一方で、失敗事例としては、先述の通り、単なるITツールの導入だけで終わり、企業全体の目標や文化に結びついていないケースが多く見られるそうです。他社の成功例をそのまま取り入れても、組織ごとに異なる課題や目標があるため、自社の理想やビジョンに基づくDXでない限り、うまくいかないことが多いのだそうです。これらの成功・失敗事例からは、自社の状況を踏まえ、オリジナルな課題解決に取り組む必要性が見えてきますね。
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4.どう進めるとよいか~デジタイゼーションで終わらないために
デジタライゼーションは、企業の業務プロセス全体をデジタル化し、効率化と最適化を図るプロセス。「紙のデジタル化」や「ツール導入」だけで終わらず、プロセス全体をデジタルで繋ぎ、業務の質を高めることが目標です。
デジタライゼーションの進め方としては、
(1)デジタル化の対象選定
どの業務プロセスをデジタル化するかを明確にする。属人化した業務や、効率が低いプロセスから始めると、効果が実感しやすい。
(2)業務プロセスの可視化と課題分析
デジタル化を進める前に、業務フローを整理・可視化し、ボトルネックや改善点を明確にする。これにより、デジタル化すべき具体的なポイントが見えてくる。
(3)システムやツールの選定と段階的な導入
プロセス全体を効率化できるツールを選び、段階的に導入。RPAやワークフロー管理ツールなどを組み合わせることで、プロセスのデジタル化を進めやすくなる。
(4)導入後の現場サポート
新しいツールやシステムをスムーズに活用できるよう、現場のプロセスに合わせたマニュアルを用意し、FAQなどのサポート体制も整備。
(5)効果測定とPDCAサイクルの実行
導入効果を定期的に測定し、必要に応じて調整・改善を行います。デジタルツールの効果は、PDCAサイクルを通じた継続的な改善で最大化できる。
こういったプロセスで進めていくと、デジタライゼーションの実現に近づいていきます。
今回のセミナーでは、主に「デジタライゼーション」についてのお話しでしたが、DXを進めるための最も重要なポイントは、デジタライゼーションで止まらず、最終段階であるデジタルトランスフォーメーション(組織全体の変革)を意識し続けることですので、そこは忘れないでおきましょう。
また、DXに取り組むうえで「DX人材」をどうするか頭を悩ませている人も多いと思います。
DXを進めるためには、ITスキルを持つだけでなく、企業のビジネス全体を理解し、デジタル技術を活用して業務やプロセスの改革を推進できる「DX人材」が欠かせません。役割としては、システム導入だけでなく、組織の中でデジタル変革のリーダーシップを発揮することにあります。
育成するには、単なる座学だけでなく、現場での経験を通じた学びが不可欠です。実際の業務におけるデジタルツールの活用や、現場の課題解決に向けた取り組みを通じてスキルを磨きます
社内リソースだけで賄えないスキルや知見を補うために、外部のDX専門家やコンサルタント、副業人材など外部人材の活用も効果的です。外部人材の導入によって、DXをよりスムーズに進め、組織内のデジタル変革を支援することもできますので、検討してみてはいかがでしょうか。
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5.最後に
セミナーでは中小企業におけるDXへの取組が、「未着手」「デジタイゼーションまで」でまだ60%以上を占めるという現状を踏まえ、デジタイゼーションの次のステップ「デジタライゼーション」について主にお話ししていただきました。
とは言え、デジタライゼーションの完了を最終目標にするのではなく、次のステップであるデジタルトランスフォーメーションを見据えながら進めていきたいものですね。そのためにも、短期的な効果を期待するのではなく、長期的な視点で評価していく経営者の判断・姿勢と従業員含めた全社一丸での取組がカギになると思いました。
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今後もOiFでは、様々な内容のセミナー、イベントを企画してまいります。
皆様のご参加をお待ちしております。