全国で100以上の町工場が参画しているコミュニティ「町工場プロダクツ」の発起人である栗原 稔さんと、その参画者である小沢 達史さんをお招きし、衆知結集することの強み=「共創」から生まれる価値について語っていただきました。
■講師紹介
合同会社MAKERS LINK 代表社員
栗原 稔 氏
有限会社小沢製作所 代表
小沢 達史 氏
■目次
- 自己紹介 、事業紹介
- MAKERS LINK →町工場プロダクツを発足した経緯 (栗原精機としての当時の課題)
小沢製作所として参画した経緯(小沢製作所としての当時の課題) - コミュニティ発足時の苦労 や失敗談
- コミュニティ形成、参加によるメリット
- 町工場プロダクツの活動内容と今後の展望
- 課題解決の先に見える中小企業の未来
- 質疑応答
1.自己紹介、事業紹介
●栗原さん(以降、親しみをこめて「おやっさん」と記載)
今回は合同会社MAKERS LINKの代表としてご紹介いただきました。
株式会社栗原精機という金属可能を生業とする町工場の2代目として、20年社長を務めました。
現在は会長職となり、MAKERS LINKの活動に主軸を置いています。
日本中の町工場のみんなと一緒に日本の製造業ものづくりを盛り上げていければなと思って活動しています。
●小沢さん(以降、親しみをこめて「たつふみさん」と記載)
有限会社小沢製作所の代表、小沢と申します。私は三代目で、生まれも育ちも八王子です。
代表になってからは5年くらいで、ちょうど事業承継のタイミングで下請けの部品製造ではなくて、自社商品をしたいっていうときにおやっさんと出会いました。
町工場プロダクツのコミュニティの中でいろいろやらせてもらっています。
町プロに出会ってなかったら、多分うちの会社は今ここまで来ていないっていうのが確信の中にあります。
2.MAKERS LINK→町工場プロダクツを発足した経緯
栗原精機としての当時の課題
リーマンショックの厳しい経営状況から抜け出し生き残ったそうですが、町工場として金属可能の請負業務を100%行っていたのでは、同じような苦境を繰り返してしまうと考えていたそうです。
そんな中で出会ったのが「メーカーズ」という本でした。この本から、アメリカのオープンイノベーションやものづくりのコミュニティについて知り、強く影響を受けたといいます。
日本でもものづくりネットワークを繋いでいるコミュニティがみつからず、自ら立ち上げることを決意。
Facebookのグループ既納を活用して「MAKERS LINK」を立ち上げました。オープンなグループとしていたため、次第に見知らぬ人々も参加するようになったと話します。活動は次第にオンラインの枠を超え、機械要素技術展への合同出展など、リアルな活動へと発展していきました。しかし、町工場の集まりだけでは従来の下請け業務の取り合いのような状況から抜け出せないと感じていたそうです。
そんな状況から抜け出すためにも、向上の端材を活用したテープカッターを最初の自社製品として開発しました。この製品が商品化され、販売できる段階に達したことで、今度は商品を展示するギフトショーへの出店を目指すようになりました。これが後の「町工場プロダクツ」というコミュニティが始まるきっかけとなったとのことです。
2.小沢製作所として参画した経緯(小沢製作所としての当時の課題)
たつふみさんは自社製品を開発したものの、どうやったら上れるのかがわからないという悩みを抱えていました。
202年12月頃、Twitterで知り合ったおやっさんとのやり取りがきっかけで、自社製品の物々交換の話が持ち上がりました。そんなやりとりの中で、おやっさんから2月の展示会に参加しないかと誘われました。展示会の知識も準備もなかったものの、自社製品を売りたいという強い意志で参加を決意。
展示会当時はコロナの影響でアウトドア商材の需要が高まっており、多くにバイヤーに商品を見てもらうことができました。
この展示会参加は私にとって大きなターニングポイントであり、おやっさんの無茶は(笑)提案に応じたことでチャンスをつかむことができました。
3.コミュニティ発足時の苦労 や失敗談
4.コミュニティ形成、参加によるメリット
展示会に参加する際に「町工場プロダクツ」という名前で町工場の自社製品を展示することになり、ロゴを揃えたり、コミュニティとしての建付けを整えていきました。
●参加者の動機、メリットについて
楽しく活動している一方で、人口現状による国内需要の縮小を見据え、メンバーのほぼ全員が事業への危機感を持っていました。
突破口を見つけるための一つの方法として、海外展開も可能な自社製品の開発がありました。現在はBtoCとBtoBを並行して展開しており、自社製品が「究極の技術見本」としての役割も果たしている。
●苦労話について
最初は文化祭的なノリで始まったこのプロジェクトですが、次第に規模が大きくなり、運営面での苦労が増えてきました。
特に大変だったのは予算の問題、町工場の参加者たちは、普段は請負加工が主な仕事であるため、デザインにお金をかけたり、在庫を持つリスクを取ることに慣れていませんでした。そのため、展示会出展のための資金の必要性を理解してもらうのに時間がかかりました。
5.町工場プロダクツの活動内容と今後の展望
●町工場プロダクツの活動内容について
当初は展示会への参加が主な活動でしたが、渋谷ロフトでのポップアップストアの開催など、販売チャネルを着実に拡大していきました。
ニッチな市場に向けた製品展開を行ったことで、熱心なファンを獲得できており、そのファンが後に事業パートナーとなるケースも出てきました。
町プロファンの力もあり、「町プロタウン」という新しいコミュニティプラットフォームが誕生しました。
これは町工場と製品のファン(「ファンズ」と呼ばれる)をつなぐ場として機能し、ファンが主体的に企画を提案・実施できるという特徴があります。例えば、工場の端材を使用したワークショップを渋谷ロフトで開催したり、キャンプ場運営者との協業でアウトドアイベントを企画したり、おやっさんの思い付きをコミュニティの誰かが拾ってどんどん形にする流れができています。従来の町工場の枠を超えた活動が展開されていると思っています。
●町工場プロダクツの今後の展望は
これまで関東地域を中心に活動を展開してきましたが、現在は地方展開を積極的に推進しています。その第一歩として浜松市で2日間のイベントを開催しました。
浜松は工業都市として知られていますが、市内には異なる特性を持つ地域が存在します。このギャップに着目して、ものづくりを通じた地域活性化をテーマにトークセッションを実施し、地元の人々と新たなつながりを築くことができました。
また、国内だけでなく海外展開も進めており、台湾の日系 雑貨店「クラフト東京」でのポップアップストアを開催しました。2-3か月にわたって実施されたこのイベントは、単発の取り組みで終わることなく、その後も継続的な展開につながっています。現在では、町工場の製品が定期的に台湾で販売されたり、新たなイベントが企画されたりするなと、着実に海外でのプレゼンスを高めています。
●メッセージ-おやっさん
特に製造業では、一概にカテゴリ分けするのは難しいですが、このコミュニティに関わっている会社は150以上にのぼり、日本の中小企業や町工場の縮図となっています。
自社製品を開発することは、会社を盛り上げることや、売上向上のひとつのきっかけとなっています。ですが、自分たちのメンバーだけがよくなればいいということではなく、もっと高い目線で、日本の製造業やものづくり全体を活性化させたい、盛り上がってほしいと思っています。日本のものづくりが再び経済を支える存在になるために、業界全体を上向きにし、明るい話題を提供し、元気な企業の姿を示すことが目標です。
●メッセージ-たつふみさん
自社製品の開発はマーケティング力を高めるために重要です。言われたものを作るだけでなく、自ら製品を市場に出すことで、企業は自社の競争力を向上させることができます。自社のコア技術を生かし、新しい市場を開拓することで、将来的に売り上げが安定する可能性が広がります。
コロナを経て、すべてを内製化するのではなく、コミュニティ内で協力し合うことが重要だと思うようになりました。苦労を経験した仲間同士で協業し、リソースを補完しあうことで、安心感が生まれます。その安心感が新たなチャレンジを可能にするのではないでしょうか。
コミュニティの取り組みは一つの手段として有効であり、続けることで成果を手にできている、もっと伸ばさなきゃと考えています。
●最後に
下請けの製造業が抱える課題を自社製品とコミュニティの力で突破し、ファンコミュニティや海外などドンドン活動の場所や領域を広げている町工場プロダクツのお二人からお話を伺い、コミュニティの力を改めて学ぶことができました。
OiF八王子館周年記念企画として、町工場プロダクツの皆様の製品を1Fロビーにて展示中です!
展示期間は1か月程度を予定しております。文具からアウトドア用品まで、日本の町工場の粋を結集した製品ばかりです。気になる方は是非OiF八王子館までお越しください。