O iF通信

  1. 八王子館トップ
  2. OiF通信
  3. 国分寺館
  4. 異分野交流のための哲学対話ワークショップ

異分野交流のための哲学対話ワークショップ


 

_______________________________________
▼プログラム
 •全体挨拶・アイスブレイク
 •哲学対話①
   哲学対話ルール説明
   提示されたいくつかの問いから選んで対話
 •哲学対話②
   参加者それぞれで問いを立てて対話
_______________________________________

哲学対話とは?

今回モデレーターとして参加いただいたのは斎木 柊志さん。東京学芸大学大学院の現役院生です。

以前当館4/26のイベントに参加し、その後こういう企画をやってみたいと再訪されました。斎木さんの意図と当館の施設上の性質が合致していたので、その後幾度か打ち合わせを重ねて実現に至りました。

ところで皆さん、「哲学対話」についてご存じですか?名前だけ聞くと小難しいことのように思えますが、「参加者同士が輪になって問いを出し合い、一緒に考えを深めていく対話のあり方」です。ルールはいくつかありますが、誰にでも分かる言葉を使う、人の言うことを否定しない、人の話をよく聞く、が基本ルールです。こう聞くと全然小難しいことではありませんね。ちなみに最近では、思考の深まりやコミュニティの醸成を目的として哲学対話を取り入れている学校もあるようです。

「哲学」と言葉が入っているからといって、哲学者の名前や哲学史の知識は必要ありませんのでお間違いなく。

―――――――――――――――――――――――――――――


1.全体挨拶・アイスブレイク

参加者は、学生や社会人、市議(!)など様々な職業や年齢層の方々。異分野交流を通して自分と異なる視点に触れる貴重な時間ですが、異分野間のコミュニケーションとなるので、言語化力・翻訳力を意識する必要がありますね。

まず軽いアイスブレイクからスタート。参加者一人ひとりに自己紹介と、「最近自分の頭のなかを一番占めていること」について話していただきました。「自己紹介」を通してお互いの背景や興味について知ることで、和やかな雰囲気が生まれ、初対面同士の距離がぐっと縮まります。

―――――――――――――――――――――――――――――

2. 哲学対話① 提示されたいくつかの問いから選んで対話

哲学対話に入る前に、簡単にルールの説明がありました。ポイントは、「相手の話をしっかりと聞くこと」と「意見を押し付けないこと」。対話では、いくつか用意された問いから参加者が話し合いたいテーマを選び、対話を行ないますが、対話の方向は特に決まっていません。「決まっていない」というより「決めない」のです。なぜなら話をまとめることを目的にしていないからなのです。
これも「哲学対話」の特徴です。

選ばれたテーマは、「価値観の合わない人への拒絶はどこまでしてもいいのか?」。このテーマをもとに、異なる価値観に対してどのように接するか、どこまで受け入れるべきかについて参加者が意見を交わし、それぞれの立場や考え方をシェアしました。

―――――――――――――――――――――――――――――



皆さんそれぞれの立場で率直に発言していきますが、ルールなので他者の発言を否定せず耳を傾けます。
参加者のほとんどが初対面であるにもかかわらず、対話を進めるうちに皆さん忖度なく本音で発言していくようになってきます。職場だと対話のつもりが議論になり、議論のつもりが討論になり、そのうち忖度して自由に発言しづらくなる・・・という状況を経験したことがある人もいると思いますが、「哲学対話」ではそんな雰囲気にはならず、健全な対話環境が生まれます。

―――――――――――――――――――――――――――――

3.哲学対話②  参加者それぞれで問いを立てて対話

今度は参加者自身が「自分が今関心を持っている問い」を考え、それを基に対話を行いました。「仕事において価値観が異なる人との向き合い方」「家庭内での価値観の違いとその調整」など、日常で直面するテーマについて対話が進み、それについて個々の体験や意見を深く掘り下げていきました。「深く掘り下げて」という言葉を最近はよく使いますが、今回に関しては「腹を割って」という言葉に近いです。発言者の問いに他の参加者が否定することなく真摯に耳を傾けてから問い返したり、考えを述べたりしていきますが、「ほとんどが初対面同士」とは思えないほど、オープンな雰囲気の中で対話が進みました。

―――――――――――――――――――――――――――――

4.最後に

名前から感じる難しい印象とは裏腹に、実は誰でもわかる言葉でお互いの考え方を尊重しながら自分の考えを伝える手法である「哲学対話」。最近は職場や家庭内でもここまで腹を割って深く話し合うことも少なくなってきたのでは、と感じるくらい相互理解を深めながらじっくりと対話がなされていました。

社会やビジネスにおいて異分野・異業種での交わりが増える中で、コミュニケーション上の誤解やトラブルも増えてきます。互いの思い込みを抱えたまま主張や議論を始める前に、まずは哲学対話を通して相互理解を深めて誤解やギャップを解消していけば、建設的な話し合いを進めていけるのではないでしょうか。

今回ゲストで参加した中原さんが仰った、「相手の価値観がわからないからこそ対話が必要。とある物事について、相手と自分が持つ価値観が違うとわかるためには、対話がないと勝手な思い込みになってしまう」という言葉は、コミュニケーショントラブルにおけるひとつの真理だと思います。

―――――――――――――――――――――――――――――






OiFでは、様々な内容のセミナー、イベントを企画してまいります。
皆様のご参加をお待ちしております。


 


モデレーター:斎木 柊志 氏

東京学芸大学大学院(修士課程)所属。演劇教育専攻。
芸術教育や演劇教育の系譜を学びつつ整理しながら、ワークショプの実践者自身の学びや振り返り、その自意識を研究。「公共でのプライベートな意見や立場の居場所づくり」を目指し、舞台の演出はじめ、芸術系ワークショップ、まちづくり、対話企画などを実践。


■ゲスト:中原 和樹 氏

㈱VOICE OF JAPAN 所属
劇団もんもちプロジェクト主宰・演出
日本演出者協会会員
山梨県立県民文化ホールアーティスティックアドバイザー
演出家・劇作家・舞台監督・アクティングコーチとして活動

 


関連記事

から関連する記事を表示しています。