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「オープン・イノベーションの教科書」の著者が、実際にオープンイノベーションをやってみて気づいたこと


「オープン・イノベーションの教科書」の著者である星野達也様が登壇。オープンイノベーションを実践された経験に基づき、取り組む際に経営者が持つべきビジョンや心構え、中小・小規模企業がオープンイノベーションに取り組む必要性、10年前に著書に記したことと現在の国内における機運についてなどお話しいただきました。

<講師紹介>
ショーワグローブ株式会社 代表取締役社長 星野達也氏

■略歴
・2000年 McKinsey&Company Japan入社
・2006年 株式会社ナインシグマ・ジャパン取締役COO就任
・2016年 ノーリツプレシジョン株式会社 代表取締役社長就任
・2023年 ショーワグローブ株式会社 代表取締役社長就任

■著書
『オープン・イノベーションの教科書』

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■目次
1.    はじめに
2.    改めて「オープンイノベーションとは何?」
3.    オープンイノベーションをやってみて気づいたこと
4.    他社との連携を検討する際に持つべきビジョンと取り組むうえでの注意点
5. まとめ
6.    最後に
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1.    はじめに

登壇いただいた星野達也さんの経歴をご紹介します。

星野さんは現在ショーワグローブ株式会社の代表取締役社長を務めていますが、これまでのキャリアは主にオープンイノベーションを中心に歩んできました。もともと鉱山技術者としてキャリアをスタートしてからアメリカ系のコンサルティング会社でビジネスの基礎を学びました。その後、株式会社ナインシグマ・ジャパンを設立し、10年間にわたって大企業のオープンイノベーションの支援を行ってきました。この経験から、オープンイノベーションの重要性や、それを活用することで得られる企業の成長可能性に強い関心を持つようになりました。

2015年に著書『オープンイノベーションの教科書』を出版しましたが、これは7版を重ねるロングセラーとなっています。この本では、特に日本の中小企業が直面する課題や、オープンイノベーションをどのように活用すれば事業成長につなげられるかを具体的に記しています。
自身としてもその後、和歌山の中堅企業 ノーリツプレシジョン株式会社の代表取締役としてオープンイノベーションを実践し、企業再建を成功させました。その経験を通じて、オープンイノベーションは理論だけでなく、実践でこそ真価を発揮するものだと感じたそうです。

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2.    改めて「オープンイノベーションとは何?」

「オープンイノベーション」とは、企業が社外の技術やアイディアを積極的に取り入れ、社内のリソースと組み合わせて新たな製品やサービスを生み出すことです。これまでの伝統的な企業のイノベーションは、社内での研究開発を中心に行われてきましたが、現代のビジネス環境では、スピードが非常に重要。特に技術革新のサイクルが短くなり、市場の変化が激しい中、社内のリソースだけで競争に勝ち続けることは困難になってきました。
そこで、外部の知識や技術を活用し、オープンな形で新しい価値を生み出すことが求められています。
オープンイノベーションを実践してきた星野さんが定義するオープンイノベーションとは
「自分たちがやりたいことをスピーディに実現するために、社外の力を借りて新たな価値を創出する」
ということです。
例えば、あるプロジェクトを自社内だけで行うと数年かかるかもしれませんが、外部企業や大学と協力すれば、その期間を大幅に短縮し、迅速に市場に投入できます。
オープンイノベーションの一例として、産学連携や他企業との共同開発、あるいはスタートアップとの協力などがあります。中小企業が技術的なリソースを補完するために大企業と連携したり、逆に大企業がフレキシブルな発想を持つスタートアップと協力することで、双方にとっての利益を生み出すことが可能になります。
特に中小企業にとっては、大企業との連携が成長の重要な鍵となります。

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3.    オープンイノベーションをやってみて気づいたこと

星野さんはオープンイノベーションを実際に実践してみて、いくつかの重要な気づきがあったそうです。
特に注目したのは、オープンイノベーションは中小企業でも大きな効果を発揮するという点。和歌山の中堅企業ノーリツプレシジョン株式会社では、売上が70億円規模の会社であっても、オープンイノベーションを積極的に取り入れることで、驚くべき成果を上げることを経験ができたそうで、その時の気づきが以下となります。

一つ目の気づきは、オープンイノベーションは単なる製造プロセスの改善にとどまらず、企業文化の改革や人材育成にも寄与するということ。例えば、外部の企業や大学と連携することで、新しい視点が社内に導入されます。これにより、社員たちがこれまで考えもしなかった新しいアプローチを学び、企業全体の生産性が向上することがあります。実際、星野さんが手がけたプロジェクトでは、社員たちが新しい考え方を取り入れ、問題解決のスピードが劇的に速くなったという事例がありました。

もう一つの大きな気づきは、オープンイノベーションが企業の変革そのものに直結するということ。特に製造業においては、単に効率化を目指すのではなく、企業の構造や戦略そのものを見直す必要がありました。オープンイノベーションを通じて得られるのは、技術革新だけではなく、企業全体の変革に繋がる文化的な変化や、新しいビジネスモデルの構築です。このような包括的なアプローチを取ることで、オープンイノベーションは単なる効率化以上の効果を生み出したそうです。

さらに、大企業との連携により、自社の限界を超えた技術や市場にアクセスできることもオープンイノベーションの魅力です。例えば、ノーリツプレシジョンでは、富士フィルム株式会社との協力を通じて、従来の写真現像機市場で競争を行うのではなく、水平統合を進め、製造と販売の役割を分担することで、業績を回復させました。
大企業との協力によって自社の強みを最大限に活かしながら、新しい事業を構築することが可能になった例と言えるでしょう。

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4.    他社との連携を検討する際に持つべきビジョンと取り組むうえでの注意点

オープンイノベーションを成功させるためには、明確なビジョンが必要です。まず、自社の目指す方向性を明確にし、その上で他社とどのように連携していくかを具体的に描くことが重要です。大企業との連携では、規模が大きく長期にわたるプロジェクトになることが多く、要求レベルも非常に高くなります。これに応えるためには、社内のスキルアップや体制整備も不可欠です。
一方で、スタートアップとの連携は、斬新なアイディアを持つ彼らと組むことで、互いの成長を加速させる可能性があります。特にスタートアップのリスクを取る姿勢やスピーディな動きから多くを学ぶことができ、社内の活性化にも繋がります

注意点としては、連携の初期段階ではすぐに成果が出ないこともあるということです。長期的な視点での取り組みが求められ、短期的な利益だけを追求するのではなく、じっくりと協力関係を築くことが成功の鍵となります。

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5.    まとめ

オープンイノベーションは、大企業のみならず中小企業にも有効な戦略です。他社のリソースを活用することで、よりスピーディかつ効果的に目標を達成できるようになります。一方で、社内文化や価値観の変革も必要です。特に中小企業にとっては、柔軟な発想と外部との協力を積極的に取り入れることで、次のステージへの成長を遂げる大きなチャンスとなるでしょう。
オープンイノベーションを成功させるには、明確なビジョンを持ちながらも、他社との協力において柔軟性を持ち、長期的な視点で取り組むことが重要です。積極的に連携を図ることで、新しい価値を創出し続けていくことが大切です。

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6.    最後に

オープンイノベーションについての著書があるだけでなく、実践もしてこられた星野さんだからこそ話せるリアルで具体的な話を、経験談を交えてわかりやすくお話しいただきました。
時には厳しい現実を踏まえた内容もありましたが、日本が置かれている人口構造や経済の現状を踏まえると、自社の将来に向けたビジョンをまず明確にして、社内変革も視野に入れながら中長期的に取り組む必要があることは当然の前提と言えるかもしれません。
産みの苦しみがあってこそ、会社の将来の繫栄につながっていくものだと改めて感じました。



今後もOiFでは、様々な内容のセミナー、イベントを企画してまいります。
今回ご参加できなかった方も、ぜひOiF開催のセミナー、イベントへのご参加をお待ちしております。

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