本イベントではまちのお菓子屋さんを経営しながら、YouTubeチャンネル登録者30万人超を誇るケーキ屋さん「bilson rollers」の門傳氏をお招きし、YouTubeを用いた小さなお店だからこそできるマーケティングについて実例をお話しいただきました。
門傳氏は大学卒業後、金融業界を経て占いの事業にて起業、現在はケーキ屋さん「bilsonrollers」を経営しながら、Webプロモーションの専門家としても活躍中です。
1章.自己紹介、店舗紹介
門傳氏が最初に立ち上げたのは電話占い事業で、広告を駆使して顧客を獲得することに成功しました。
ターゲットを恋愛占いから「復縁を望む人」に絞り、「復活愛専門の占い店」というテーマを打ち出して差別化を図りました。この経験はお菓子屋さん立ち上げのターゲティングにも活きています。
その後、人に接する仕事がしたいという考えから、ケーキ業界に転身、「bilsonrollers」を立ち上げました。
2章.情報発信への挑戦
門傳氏が情報発信を始めたきっかけは、地元のケーキ屋さんという立場から「どうやって知ってもらうか」という課題からでした。
最初はメルマガを活用。来店したお客様に登録してもらい、商品の背景や特典情報を配信。
メルマガの内容は、単なる宣伝ではなく、「このケーキがどのように作られているか」や「原材料についてのエピソード」など、ケーキができるまでのストーリーに共感しやすい内容を心がけました。
次に目を向けたのがYouTube。「ケーキ作りの裏側」や「仕込みの風景」など、視覚的に楽しめる動画を投稿しています。
最初はスタッフ教育の効率化を目的とした動画投稿がきっかけでした。
新人スタッフがケーキ作りの手順を復習できるよう、動画を作成して共有したところ、社外の人々にも楽しんでもらえる内容であることに気づき、外に向けた発信を開始しました。次第に再生回数が増加し、チャンネル登録者も増え始めました。
その結果、動画を見た視聴者が実店舗に訪れたり、オンラインショップで商品を購入するという成果につながりました。
3章.YouTube戦略
門傳氏のYouTubeチャンネルには400本以上の動画が公開されており、どのような戦略のもと投稿をしているのかを、深堀りしていきます。
特に力を入れている工夫
- キーワードの最適化:
他の動画も参考に検索キーワードを研究し、「人気キーワード」と「業界特有の検索ワード」を組み合わせています。
例えば「ケーキ作りのコツ」や少し前の流行りだと「モーニングルーティーン」などといった
視聴者が検索するフレーズを積極的に取り入れました。
- 動画の視聴維持率向上:
動画冒頭でハイライトを見せて、本編、まとめとYouTubeの基本的な構成を踏襲しつつ、続きが気になる構成にしています。
現在のYouTubeは視聴継続率が重要な指標となっており、サムネイルと内容があっていることが求められています。
- サムネイルの工夫:
鮮やかな画像とキャッチーなテキストを組み合わせたサムネイルを作成し、一目で内容がわかるデザインに。
予めサムネイルは何種類か用意し、動画が伸びなかった場合はすぐに差し替えるなど、投稿して終わりではなくできる限り改善を図っています。
- 多言語対応: 英語字幕をつけることで海外視聴者にもアプローチ。
バズった動画の視聴者動向を分析したところ、意外にもインドの方にたくさん視聴してもらっていました。
ケーキ文化も国によって異なっており、日本のケーキ作りが気になるという人もいるようです。
一番人気の動画は「フォレノワールの作り方」で、2000万回を越える再生数を叩き出しています。
門傳氏によると、ケーキ作りの工程自体の面白さや目新しさ、翻訳した言葉のスペル間違いでコメントが盛り上がったりなど、
様々な要素が重なり、再生回数の伸びにつながったと分析しています。
4章.販路拡大の実践
小規模なケーキ屋ながら、全国や世界からの注文がある「bilson rollers」。
ECサイトへの試行錯誤や、商品ラインナップにおける工夫や実践についてもお話しいただきました。
- オンラインショップの開設:初めは独自のECサイトをもっていましたが、売り上げに繋がりませんでした。
そこで、楽天やAmazonなど大手プラットフォームを活用し、集客力のある既存のマーケットに出店。
メルマガやYouTubeなど独自の発信媒体を持つことができたことで、
BASEを用いた独自のオンラインショップを再構築し、利益率の向上を図っています。
- ポップアップストアの展開:百貨店や地域のイベントに参加し、商品を直接試食・購入できる場を提供。
流行に合わせた商品等を展開しています。
- 商品ラインナップにおける工夫:
門傳氏のケーキには「高級な食材を使用したプレミアムなライン」と「手頃な価格で楽しめる通常ライン」の2種類を揃えています。
例えば高級ブランデーを使用したケーキは、芳醇な香りと深みのある味わいが特徴で、贈答品や特別な日のお祝いに好評です。
一方で、通常ラインはプレミアムラインに比べて日常的に楽しめる価格帯を意識し、
比較的気軽に購入できるよう工夫されています。この2ライン戦略が幅広い層やシーンへのアプローチを可能にしています。
5章.今後の展望
門傳氏の次なる目標は、店舗・会社のYOUTUBEチャンネル運営方法を必要な方へ届けることです。
中小企業向けにYouTube活用やSNSマーケティングの知識を提供していくこと、
また既にYouTubeを開設しており、動画も投稿予定。
動画編集の基礎や、SNSでの効果的な発信、メルマガ活用術など、今後多岐にわたる内容を展開予定です。
「自社の発信ツールを持つことで、ビジネスの次元が変わる」と語る門傳氏。 まとめとして店舗経営や情報発信において重要な発想転換の考え方について、3つを挙げました。
- 自分視点からお客様視点に変える
どうやって集客するかではなく、どうすれば欲しくなるかを考える。
- 大げさにしてみる
ファンを2倍にするという規模ではなく、いったん100倍にするには?という思考で考えてみる。
- やるべきかやらないか。
もっと集客するにはではなく、集客しなくてもよくなる方法を考えてみる。
時に発想の視点を変えながら考えること、発信を継続し改善し続けることの大切さについて、実体験を交えてお話しいただきました。 皆さんの運営する自社メディアやSNS発信のヒントを得ていただく機会になったのではないでしょうか。
株式会社bilson 代表取締役社長
門傳 智彦 氏
今後もOiF八王子館では様々な企画をご用意しております。
多摩地域等の中小企業の皆様にとって有益な情報を得られる場にしてまいりますので、
今後もぜひご参加ください。