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新規事業の立ち上げをサポートするフレームワーク:「ビジネスモデルキャンバス」


『新規新規新規事業に活用できる新たなフレームワーク「ビジネスモデルキャンバス」』をテーマにしたセミナーを開催致しました。

今回は「ビジネスモデルキャンバス」を使った新規事業の立ち上げ方法をテーマに、新規事業に関わる方が誰でも実践できる具体的なステップを解説いただきました。

講師は、自らも新規事業を数多く展開している株式会社ブログル 代表取締役社長 井村氏です。
セミナーでは、具体的な事例を交えながら分かりやすく解説してくださいました。


ビジネスモデルキャンバスとは

「ビジネスモデルキャンバス」とは、ビジネスの全体像をひと目で把握できるフレームワークで、事業戦略や計画を視覚的に整理しやすくする特徴があります。
このフレームワークを使うと、事業の構造や価値提案、ターゲットとなる顧客が明確になり、方向性が定まりやすくなります。
たとえば、商品の「付加価値」や「収益モデル」を整理し、ビジネスの骨組みを簡単に描ける点が魅力です。

今回のワークで使用されたビジネスモデルキャンバスがこちら



ビジネスモデルキャンバス活用事例

実際にどのように活用されているのか、具体例を詳しく見てみましょう。


  1. 新製品開発のプロジェクトへの応用
    ビジネスモデルキャンバスを用いることで、製品の市場投入前に課題を洗い出すことが可能です。
    例えば、ある中小企業が新しい食品製品を開発する際、顧客セグメントと価値提案の欄を使い、ターゲット顧客のニーズと製品のユニークな特徴を徹底的に分析しました。その結果、どの特性が競争優位性を高めるかが明確になり、開発に集中すべきポイントが絞り込まれました。

  2. サービス業の改善プロジェクト
    ある美容サロンでは、収益構造とコスト構造を見直すためにビジネスモデルキャンバスを活用しました。
    これにより、収益に貢献していないサービスが特定され、リソースの再配分が可能に。さらに、パートナーシップ欄から新しいコラボレーションのきっかけを発見し、顧客満足度の向上と収益増加につながりました。

  3. 新規市場参入の戦略立案
    製造業の企業が海外市場に進出する際、チャネルと顧客関係の欄を活用して、最適な販売ルートと顧客との接点を整理しました。
    このプロセスにより、無駄なコストを削減しながら、現地の顧客ニーズに応える柔軟な戦略を構築することができました。

これらの事例からわかるように、ビジネスモデルキャンバスは業種や規模を問わず多様なビジネスシーンで応用可能です。
具体的な課題を可視化し、解決に向けた行動計画を構築する際の強力なツールとして活用できます。


PDCAサイクルとの違い

ビジネスモデルキャンバスとPDCAサイクルには、明確な役割の違いがあります。


  1. 目的の違い:ビジネスモデルキャンバスは、事業構造を視覚的に整理し、新規ビジネスの方向性を明確化することを目的としています。
    一方、PDCAサイクルは、既存のプロセスを継続的に改善するためのフレームワークです。

  2. アプローチの違い:ビジネスモデルキャンバスは、計画段階において「仮説の洗い出し」と「全体の見通し」を作成するためのフレームワークとして活用されます。これにより、全ての要素が連携し、具体的な行動計画を策定しやすくなります。
    一方、PDCAは計画の実行後に進行状況を測定し、改善点を繰り返し適用するプロセスを重視します。

  3. 具体的な利用場面:たとえば、ビジネスモデルキャンバスは新しいプロジェクトの計画段階で使用される一方、PDCAサイクルはその計画が実行に移された後、進捗を評価し修正する段階で使用されます。

これらの違いを理解することで、状況に応じたフレームワークの選択が可能になります。
たとえば、新しい市場戦略を考えるときにはビジネスモデルキャンバスを、既存のプロセスを改善する際にはPDCAサイクルを活用する、といった具体的な使い分けが実現できます。


新規事業立ち上げにおける実際の使用方法

ビジネスモデルキャンバスを活用した新規事業の進め方を詳しく見ていきましょう。


1.    最初のステップ「価値提案の明確化」: まず、自社が提供する価値を整理します。
「どのような顧客ニーズを満たすのか」「市場での競争優位性は何か」を具体的に考え、価値提案の欄に記入します。この作業により、ビジネスの核となる部分が浮き彫りになります。

2.    リソースとアクティビティの洗い出し: 次に、事業を支えるために必要なリソース(人材、設備、技術など)や、実行すべき主要な活動を特定します。
ビジネスモデルキャンバスを活用することで、どの部分に重点を置くべきかが明確になります。

3.    収益構造とコスト構造の分析: 提供する価値がどのように収益を生み出すのかを考え、収益構造の欄に記載し、それを実現するためのコストも整理します。
このプロセスは、事業の採算性を事前に確認するために重要です。

4.    チャネルと顧客関係の設計: 顧客に価値を届けるための最適なチャネル(販売経路やマーケティング手法)を検討し、それに基づいて顧客との関係を構築します。
このステップでは、ターゲット層に適したアプローチを選択することがポイントです。

これらのステップを順に進めることで、新規事業を効率的かつ効果的に立ち上げることができます。
仮説を具体的な行動計画に変え、実行可能な戦略を構築するための手順がこのキャンバスに詰まっています。


実際に作ってみよう

セミナーでは、ビジネスモデルキャンバスを実際に作成するワークも行われました。参加者の皆様からは次のような意見やアイデアが飛び出しました。


  1. 「価値提案が曖昧だと顧客に響かない」
    自社の価値提案について課題を指摘し、ターゲット顧客の具体的なニーズを深掘りする重要性について自社の強みをどのように伝えていくべきかが議論されました。

  2. 「収益構造とコスト構造のバランスが難しい」
    収益構造を設計する際に、コスト構造とのバランスを取ることがいかに難しいかが発表されました。
    それに対し、講師からは、成功事例をもとに具体的なアドバイスをいただきました。

  3. 「チャネル戦略をもっと柔軟に考えたい」
    自社のチャネル戦略を見直す必要性を感じていると発言されました。これに対し、講師がデジタルチャネルの活用事例を挙げて解決策を提案しました。

重要なポイントを一つひとつ確認しながら進めることで、自社の強みを具体的に見直し、それを顧客にどのように伝えるべきかが明確になるという成果が得られます。この手法を使うと、実際のビジネスに応用するイメージがより鮮明になり、初めてでも取り組みやすくなるはずです。


質疑応答

最後に行われた質疑応答では、参加者の皆様から具体的な質問が寄せられました。


  1. 「ビジネスモデルキャンバスを小規模事業に適用する際の注意点は?」
    講師は、「小規模事業ではコスト構造とリソース欄を特に重視すること」とアドバイス、限られたリソースを効率的に活用するためには、優先順位を設定して、最小限のリソースで最大の成果を生み出せる活動に注力することが重要だと強調されました。
    たとえば、従業員のスキルに応じた業務の再配置や、外部パートナーとの連携を活用するといった具体的な方法が提案されました。

  2. 「競合と差別化するためのアイデアが浮かばない場合は?」
    この質問に対して、講師は「価値提案欄を活用して、自社の強みを洗い出す」方法が提案されました。さらに、顧客セグメント欄を活用して、特定のニーズに応じた付加価値を見つけることの大切さを述べました。

  3. 「デジタルチャネルの導入が遅れているが、どこから始めるべきか?」
     デジタル化への第一歩として、講師は「顧客関係欄からスタートし、オンラインでのコミュニケーション方法を見直す」ことを推奨しました。これにより、顧客体験を向上させる小規模な施策から着手できると説明されました。

  4. 「ビジネスモデルキャンバス」を勉強する上で、参考にすべき書籍を紹介してほしい」
    参考書籍は多数あるので、自分に合った書籍を選ぶことが大切だと思うが、あえて紹介するのであれば「ビジネスモデル・ジェネレーション: ビジネスモデル設計書 ビジョナリー、イノベーターと挑戦者のためのハンドブック」という書籍をオススメされました。


まとめ

本セミナーを通じて、「ビジネスモデルキャンバス」は新規事業を効率的かつ効果的に立ち上げるために非常に強力なツールであることが再確認されました。
その活用により、事業の全体像を明確化し、具体的な行動計画を策定することができます。

特に以下のポイントが重要です。

  • 価値提案の明確化:顧客に何を提供するのかを具体的にする。
  • リソースと活動の最適化:限られたリソースを有効に活用する方法を見つける。
  • 収益とコストのバランス:事業の採算性を初期段階で確認する。
  • 顧客との関係構築:適切なチャネルを通じて価値を届ける。

これらのステップを踏むことで、参加者の皆様が直面している具体的な課題を解決し、新たなビジネスチャンスを切り開くことが可能になるでしょう。

「ビジネスモデルキャンバス」を活用し、次のステージに向けた行動を始めてみませんか?

 


株式会社 ブログル 代表取締役社長
井村 学 氏

 




 


 

  • 広告代理店にてプロモーション企画やパッケージ・広告デザインを経験。
  • その後、大手シューズメーカーにて広告宣伝、広報、マーケティング、商品企画等の部門を経てブランドマネージャーに就任。
  • 新規ブランドを立ち上げ、年間10万足超えのヒット商品へと導く。
  • コーポレートブランディングプロジェクトのサブリーダーとしてCIやブランドスローガンの開発にも携わる。
  • 2017年に多数の上場企業をクライアントに持つマーケティング会社の取締役COOに就任。
  • カゴメ、PwC、広島県、オンワード樫山、NRI、アルファドライブ等のクライアントを主に管轄。任期中に売上約400%(就任前の前年対比)を達成。
  • 2022年に株式会社ブログルの代表に就任。マーケティング支援にて多数の中小企業の売上改善に貢献。
  • 同時に東京都が運営する起業支援事業「TOKYO創業ステーション」の起業相談員を務め、年間約300件の起業/ビジネス相談に対応。
  • その他、各種ビジネスセミナーの講師、大学のビジネスコンテスト審査員やゼミ特別講師も務める。
  • 2023年に株式会社TEGOのCMOにも就任。放置竹林や牡蠣筏廃棄といった社会問題の解決と経済的かつユーザー利便性の両立を果たす為のマーケティング活動にも取り組んでいる。

 


今回のセミナーで紹介された書籍
「ビジネスモデル・ジェネレーション: ビジネスモデル設計書 ビジョナリー、イノベーターと挑戦者のためのハンドブック」
はOiF八王子館でも読むことができます。



今後もOiF八王子館では様々な企画をご用意しております。

多摩地域等の中小企業の皆様にとって有益な情報を得られる場にしてまいりますので、今後もぜひご参加ください。


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