『中小企業のためのデザイン戦略とイノベーション~デザインを活用して企業価値を高める方法~』
講師:株式会社346 創業者 共同代表/菅野 秀 さん
近年、デザインは単なる装飾ではなく、イノベーション創出や事業成功に不可欠な要素として注目されています。
本セミナーでは、デザインの重要性とイノベーションへの貢献について、ご自身がハードウェアエンジニアであり工業デザイナーである菅野 秀 さんから、具体的な事例やデータを用いて詳しく解説いただきました。
【登壇者】
菅野 秀 さん
株式会社346 創業者 共同代表
株式会社リコー、WHILL株式会社、アクセンチュア株式会社を経て、株式会社346を創業。
これまで、電動車いすをはじめとする医療機器、福祉用具、日用品などの製品開発および、製造/SCM領域のコンサルティング業務に従事
今までは、私の「デザイン」に対する認識は「おしゃれでスタイリッシュなもの」という漠然としたイメージに留まっていました。しかし、今回のセミナーを通して、その概念は大きく覆されました。
デザインは単なる装飾ではなく、機能、使いやすさ、サービスなど、顧客中心に考えられた顧客体系や、ビジネスシーンにおける付加価値の創出までを担う重要な要素であることを知りました。
また、米国やイギリスにおける調査によると、デザインへ注力する企業は、そうでない企業と比較し、10年間で株価が 2倍程度の差が開くというデータが特許庁から出されており、デザインがイノベーション創出と事業成長に貢献することを明確に示しています。
私も最初は、デザインを重視することがなぜ売上につながるか、ピンとこなかったのですが、観察力の鋭いデザイナーによって、クライアントの持っている漠然としたアイデアが具現化されることで、新しい発見やイノベーションにつながったり、製品化の際の不具合が早い段階で見つかることでリスクヘッジがとれるなど、具体的な事例を交えた菅野さんのお話がとても分かりやすく、理解できました。
さらには、初期から最終段階までの製品化プロセスの中核にデザインをおくことで、必要なタイミングで必要なデザインリソースを共有でき、デザインと技術やコストなどの要素をバランス良く考慮した一貫性を持った完成品を作ることができる、という説明もとても分かりやすかったです。
確かに、デザイナーが「デザイン画を描く」だけで商品化の工程に関らない場合、技術力やコスト面で現実不可能な個所が出てきて、最終的な商品はデザイン画からかけ離れたものになりますが、デザイナーが全工程に関わり、製造現場とデザイナーがコミュニケーションをとることで常に軌道修正や調整できます。これは非常に強みになります。
以上のことから、エンジニアとデザイナーが協力できる環境が大切だという事がわかりました。
ものづくり中小企業の場合、自社でデザイナーを抱えることは難しいかもしれませんが、今回のセミナーのように、デザイン思考を学ぶことでデザイナーの考えを理解できれば、外注する場合でもコミュニケーションがスムーズになって商品開発のハードルが下がり、イノベーションにつながると感じました。
セミナー後の質疑応答では、デザイナーの働き方(リモートor出社)や選び方など、具体的な質問が参加者から菅野さんに寄せられました。
中でも個人的に印象深かったのは、「デザインとは依頼者の要望を具体的な形にすることですか?」という質問に対する菅野さんの答えでした。
菅野さんは「依頼者のオーダーを鵜吞みにせず、依頼者の求めている本質を引き出すことが大切」とおっしゃいました。
オーダー内容の詳細を「これはこういうことですか?」と依頼者に問いかけ、返ってきた答えに対してまた問いかける・・というコミュニケーションを重ねることで、依頼者のアイデアをブラッシュアップして具現化することが大事だと。
この工程は、依頼者だけでなく、対チーム、対エンジニアなどあらゆる面で重要とおっしゃっていました。
自身の組織に置き換えてみてもとても納得のいくお答えで、あらためてコミュニケーションの大切さを実感しました。
OiF国分寺館では、今後もオープンイノベーションにつながる様々なジャンル・分野のイベントを企画しています。
今回、ご参加できなかった方も、ぜひ一度、OiF開催のセミナーにご参加ください!