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メイドインジャパンの「技と心」から創りだす「世界唯一」への挑戦(OiF国分寺館 開館1周年記念イベント)


OiF国分寺館は2023年10月6日に開館いたしました。
その1周年記念講演として、日産R35GT-Rのプロジェクト責任者兼開発責任者で、"ミスターGT-R"こと水野和敏氏がご登壇。
「新商品の開発に於ける発想法やその実現手法、その世界ブランド化」等と共に、日本の製造業全般が将来に向けて必要なエッセンスについて、人材の育成から組織造りまで語っていただきました。

<講師紹介>
プロジェクト・カーズ合同会社 代表 水野和敏氏

■略歴
 1952年1月 長野県生まれ。  1972年4月 日産自動車入社
・‘80年末迄、スカイライン,フェアレディ Z、プリメーラ等、日産を代表する車の車両全体計画
 設計や開発責任者を歴任。
・‘89年末から、「グループCメーカー選手権レース」に、監督兼チーフエンジニアとして自身が
 開発したレース車で参戦。参戦した初年度から全てのチャンピオンを独占し続け、デイトナ
 24時間レース制覇も含め、レース史に残る偉業を達成。
・‘97年から、世界初の「高級高性能FR車用の共用プラットフォーム系列(FMパッケージ)」を
 開発して、僅か3年で、スカイライン、Z33フェアレディ、FX35SUVなど、高収益な新型5車
 種を市販し、日産リバイバルプランの早期達成に貢献。
・'03年末から、日産R35GT-Rで全ての権限を託され「通常の半分以下の資源(人、モノ、金、
 時間)と短期間」で、世界で唯一の商品”マルチ・パフォーマンス・スーパーカー”を創り、
 世界的ブランドを構築。「ミスターGT-R」と世界から称される。
・ 2014年から、台湾、裕隆グループのLUXGEN車の開発担当副社長と、華創日本(株)の代表
 取締役を兼任して、SUVや4ドアサルーンなどの市販車を開発。
・ 2020年からは、プロジェクト・カーズ合同会社を設立し代表として活動。「新たな商品を
 創造する思考法や、それを実現させる開発の方策、基点となる本質の見抜き方」等の講演や
 出版活動、コミュニティ運営等で活動中。
■著書
『0➪100、生み出す力』(フォレスト出版/2022年)
『匠のこころ その先の価値を創るリーダーの思考』 (すばる舎/2015年)
『バカになれ!カリスマ・エンジニア「ゼロからの発想術」』(文藝春秋/2014年)
『非常識な本質』(フォレスト出版/2013年)
『プロジェクト GT-R 常識はずれの仕事術』(双葉社/2009年 新書版/2013年)    

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■目次
0.    登壇者のご紹介
1.    車両設計開発の仕事とは~R35GT-R開発秘話
  ➪ 「絶対にそれは無理! 出来るはずが無い!!」からのスタート
2.    最少の資源(人、モノ、金、時間)が最高のチームと結果を造りだす
  ➪ 無駄を排除した「目的合理性」の訴求!
3.    良いクルマは作るな!「欲しいと想うお客様の心」を創りだす
  ➪ 売れる新商品と、作り手の思い込み商品の違い
4. 世界唯一を創るために必要な事は
  ➪ ITやAIは「過去の実績や結果を効率良く活用」するツール
5.    中小小規模企業へのメッセージ
  ➪ アメリカ型の消費構造が全てでは無い!! 価値を高めた商品造りを目指そう!!
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0.    登壇者のご紹介​​

登壇いただいた水野和敏さんの経歴をご紹介します。

水野さんは長年、日産自動車の車両設計開発の現場でキャリアを培ってこられ、特にR35GT-Rの開発プロジェクトでは全ての権限を託されて主導してきました。レースの世界でも監督、設計者、エンジニアとしての役割を一手に担い、限られた資源の中で最大の成果を上げることを目指してきました。日本のものづくりの本質を常に追求し、その技術と心をもって世界唯一の商品を生み出すことに現在でも情熱を注いでいます。

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1.    車両設計開発の仕事とは~R35GT-R開発秘話
  ➪ 「絶対にそれは無理! 出来るはずが無い!!」からのスタート


車両設計開発は、単に技術的なパラメーターに基づいて車を作るという仕事ではありません。もちろん、エンジニアリングや性能は重要な要素ですが、水野さんが大切にしているのは、その車を「誰がどのように使うのか」という視点。単なる物理的な移動手段としての車ではなく、お客様が「この車が欲しい」と思う理由、すなわち心の中にある情熱や夢を形にすることが、車両設計開発の本質だと考えているそうです。

水野さんはR35GT-Rを開発した際に、単に最高速度を競うだけでなく、車の本質的な楽しさや使い勝手、さらには安全性までも考慮しました。R35GT-Rはスーパーカーとしての性能を持ちながら、日常的に使える実用性も兼ね備えています。雪道や荒れた路面でも安心して走行できる4輪駆動システム、そして広い荷室を持つことで、家族での旅行にも対応できる車となっています。これにより、ただの「速い車」ではなく、多くの人々に「乗りたい」「使いたい」と思わせる車を作り出すことができました。

また、設計開発にはチームワークが不可欠。水野さんが監督してきたチームは、50人にも満たない規模でありながら、2~300人規模の大企業の開発チームに負けない成果を上げました。これは、個々のメンバーの力を最大限に引き出すためのコミュニケーションや戦略をとることが重要、との考えからだそうです。設計者やエンジニアがそれぞれの役割を越えて協力し合い、常に「お客様にとっての最適解」を追い求めることが、成功のカギなのです。


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2.    最少の資源(人、モノ、金、時間)が最高のチームと結果を造りだす
  ➪ 無駄を排除した「目的合理性」の訴求!


現代の車両開発において、多くの企業が莫大な予算やリソースを投入することで、新しい技術や製品を生み出すことが常識とされています。しかし、水野さんは、「最少の資源で最大の結果を生み出すことこそが、本当の開発力であり、リーダーシップの証」と自らの経験からおっしゃっていました。

R35GT-Rの開発において、水野さんは「半分以下の予算と半分以下の人数、そして半分以下の時間で最高の車を作る」ことに挑戦しましたが、このような条件下で開発したにもかかわらず、R35GT-Rは世界に通じるスーパーカーとしての地位を確立しました。この成功は、無駄を徹底的に省き、開発プロセスを効率化したことが背景にありました。頭の中で全ての設計をシミュレーションし、試作費を限りなくゼロに抑えることができたそうです。

リソースが少ない中で成果を上げるためには、チームの全員が自分の役割を明確に理解し、それを超えて互いにサポートし合うことが重要です。水野さんのチームでは、デザイナー、エンジニア、メカニック、そしてマーケティング担当者が一体となり、プロジェクトの成功に向けて尽力しました。彼らが一つの目標に向かって動くことで、限られた資源の中で驚異的な成果を生み出すことができました。

最少の資源で最高の結果を出すためには、リーダーシップと効率的なチーム運営が不可欠。また、現場の全員が自分の力を信じ、プロジェクト全体の成功に貢献する姿勢を持つこと大切です。


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3.    良いクルマは作るな!「欲しいと想うお客様の心」を創りだす
  ➪ 売れる新商品と、作り手の思い込み商品の違い


「良い車を作れば売れる」という考えは、一見正しいように思えますが、現実はそうではありません。製品そのものがどれほど優れていても、お客様の心を動かさなければその商品は売れない、というのが水野さんの考えです。技術やスペックに重きを置くあまり、製品の本当の価値を見失ってしまうことは、ものづくりの世界ではよくある話かもしれませんね。

水野さんはR35GT-Rを開発する際に、「この車をお客様が欲しいと思うかどうか」という視点を最も大切にしたそうです。車の性能やデザインはもちろん重要ですが、最終的に購入を決めるのは、その車がお客様の心にどれだけ響くか。R35GT-Rはただ速いだけの車ではありません。ビジネスでも、旅行でも、さらには雪道でも安心して乗れる実用性を備えつつ、スーパーカーとしての圧倒的な性能を持っています。これにより、「この車なら、日常でも特別なシーンでも使える」と感じてもらえる車になっています。

さらに重要なのは、製品を開発する際に、お客様の心を先に考えること。水野さんは商品を作ってから市場調査をするのではなく、初めにお客様が何を求めているのかを深く掘り下げ、それを形にすることを心掛けているそうです。実際に、アメリカのスーパーカーユーザーに直接話を聞きに行き、その声を基にR35GT-Rの開発にフィードバックしたとのこと。これが、単なる技術的な進化ではなく、心に響く商品を生み出すことになったのですね。


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4. 世界唯一を創るために必要な事は
  ➪ ITやAIは「過去の実績や結果を効率良く活用」するツール


他と同じことをしていては、世界に唯一無二の商品を作ることはできません。模倣やベンチマークは確かに市場のニーズを把握する手段の一つですが、そこからさらに一歩先を行く独自性がなければ、真の価値を持つ商品は生まれません。日本の技術と文化を活かして、他にはない商品を生み出すことが、世界唯一の商品を作るための第一歩、と水野さんは語ります。
R35GT-Rの開発では、既存のスーパーカーメーカーと同じ車を作っても意味がないと感じていたそうです。フェラーリやポルシェのような車は確かに優れた性能を持っていますが、水野さんはそこに日本人にしかできないアプローチを取りました。それが、スーパーカーとしての性能だけでなく、日常的な使い勝手や実用性を兼ね備えた車を作るという発想です。これにより、R35GT-Rは他にはない独自の存在として市場で評価され、長期にわたって販売され続ける車となっています。
また、世界唯一の商品を作るためには、無駄を徹底的に排除し、限られた資源の中で最大限の効率を追求することが重要です。日本のものづくりの強みは、少ない資源で大きな成果を上げるという点。これは、車両開発に限らず、あらゆる製品開発に言えることですね。効率的なプロセスと独自のアイデアを組み合わせることで、世界に通じる唯一無二の商品を生み出すことができる、と水野さん。

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5.    中小小規模企業へのメッセージ
  ➪ アメリカ型の消費構造が全てでは無い!! 価値を高めた商品造りを目指そう!!


水野さんから中小企業の皆さんへのメッセージは「挑戦を恐れず、独自の道を進め」ということ。大企業のように豊富なリソースがない中で、どうしても「限界」を感じてしまうかもしれません。しかし、その限界こそが、創造力を引き出す最大のチャンスでもあります。R35GT-Rの開発や数々のプロジェクトにおいて、限られた資源の中で最大の成果を上げてきた水野さんが言うと説得力が違います。

大企業のやり方をそのまま真似るのではなく、独自の強みを見つけ、それを磨き上げること。大きな組織に頼らず、少人数であっても、真剣に向き合い、お客様の心をつかむ商品を生み出すこと。柔軟な対応力や、迅速な意思決定は中小企業だからこそできる大きな武器です。

失敗を恐れず挑戦し続ける姿勢も大切です。失敗は成功へのステップ。それを乗り越えた先にしか、本当の成功はありません。水野さん自身、何度も壁にぶつかりながらも、新しいアイデアと情熱を持ち続けることで、数々の成果を上げてきたそうです。水野さんは、皆さんも自分たちの強みを信じ、常に挑戦し続けることで、世界に通じる唯一の商品を生み出してほしい、とおっしゃっていました。


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6. 最後に(事務局より)

施設も開館から無事1周年を迎えることができました。日ごろからご利用いただいている皆様のおかげです。
この場を借りて御礼申し上げます。

講演当日はたくさんの方にご来場いただきました。水野さんにも終始熱く語っていただき、参加した皆さんも濃厚なお話に引き込まれていた様子でした。
また、水野さんにいろいろ質問したかったという方も多かったと思いますが、時間の都合で皆さんの質問をお受けすることができませんでした。楽しみにしておられた方も多かったと思います。申し訳ありませんでした。





今後もOiFでは、様々な内容のセミナー、イベントを企画してまいります。
今回ご参加できなかった方も、ぜひOiF開催のセミナー、イベントへのご参加をお待ちしております。

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