3月14日(金)に実施したイベントの内容をお届けしています。
気になっていたけど申し込めなかった、OiFってどんなイベントをやっているのかなど、ご興味のある方は是非ご一読ください。
1.はじめに
中小企業の事業承継は、単なる経営者の交代ではなく、企業の存続と成長に関わる重要なプロセスです。日本では多くの中小企業が後継者不足の課題に直面しており、円滑な承継のためには計画的な準備が必要です。
事業承継の基本から具体的な進め方までを、中小企業診断士の延吉氏に解説していただきました。スムーズな移行を実現するためのポイントや、事業承継における課題への対応策についても詳しくご紹介します。
2.事業承継の実態
日本における事業承継の現状
近年、多くの中小企業が後継者不足に直面しています。中小企業庁の調査によると、日本の中小企業のうち約半数が後継者未定の状態にあり、事業承継の問題が経営課題の一つとなっています。
- 後継者が決まっていない企業の割合:50%以上
- 経営者の平均年齢:60歳以上が過半数
- 廃業の主な理由:後継者不在(約30%)
これらのデータからもわかるように、早期の準備が企業の存続に直結することがわかります。
事業承継の成功事例と失敗事例
- 成功事例: 後継者が若いうちから経営に関与し、10年かけて段階的に引き継ぎを行った製造業企業。結果として、売上の維持と従業員の定着を実現。
- 失敗事例: 突然の引退により、後継者が準備不足のまま経営を引き継ぎ、取引先との関係性が悪化。結果的に廃業に追い込まれた事例も。
3.事業承継で承継すべきもの
事業承継では、単に代表者が交代するだけではなく、経営資源全体を次の世代に引き継ぐ必要があります。
事業承継の主な対象
- 経営権(経営者の地位・意思決定権)
- 会社の資産(不動産・設備・知的財産など)
- 従業員と企業文化
- 取引先や顧客との関係
- 財務・株式(自社株式の承継など)
事業承継の方法
- 親族内承継(息子・娘、親族が後継者になる)
- 社内承継(従業員や役員が後継者になる)
- M&A(第三者承継)(外部の企業や投資家に経営を引き継ぐ)
事業の特性や経営者の意向に応じて、適切な方法を選択することが重要です。
4.事業承継のステップ
事業承継の流れ
事業承継には、以下のステップを踏むことが推奨されます。
1.事業承継計画の策定(3~5年前)
- 後継者候補の選定
- 事業の現状分析と将来ビジョンの明確化
- 株式や財務状況の整理
2.後継者の育成(1~3年前)
- 経営の実務経験を積ませる
- 取引先との関係を築かせる
- リーダーシップ研修の実施
3.実際の引き継ぎ(1年以内)
- 代表取締役の交代
- 株式譲渡、財務調整の実施
- スムーズな移行のための従業員説明会の実施
4.事業承継後のフォロー(1~2年)
- 旧経営者が一定期間アドバイザーとして支援
- 新経営者の権限強化と安定経営の確立
5.事業承継後のこと
新経営者が注意すべきポイント
- 従業員との信頼関係の構築:組織内の結束を強める
- 取引先との関係維持:既存の関係性を壊さない
- 財務管理の見直し:無駄なコストを削減し、利益体質を強化
旧経営者の役割
- 一定期間のアドバイザーとしての関与(新経営者のサポート)
- 急激な変革を避け、段階的な承継を実施
事業承継後の成長戦略
- デジタル化やDXの推進(効率化による経営基盤強化)
- 新規市場の開拓(新規顧客の獲得)
- イノベーションの促進(事業の多角化や新規事業展開)
6.事例研究
実際に起こった事業承継の事例を基に、参加者の皆様で承継を成功に導くために何が必要かディスカッションを行いました。
事例:地方の製造業での親族承継とイノベーション
事業承継への課題
- 地方の中小製造業(機械部品メーカー)
- 社長(父親)は技術畑の職人型経営者
- 職人間での反発もあり、従業員の離職率が当時の課題
- 後継者(息子)は商社勤務の35歳で、現場経験はなし
ディスカッションでは次のような意見が出ました。
- 経営と現場の切り分け(経営は経営、現場は現場という意識付けを行う)
- 想定されている反発に対する理解を求める
- 後継者を外部の研修に出すなどの教育をする
ディスカッションを通じて出た意見と、実際に行われた改善策にはGAPがあるのか確認してみましょう。
結果
- 後継者は外部の経営研修で学び、現場研修も同時に実行
- 現場で従業員との信頼関係を構築し、働き方改善に繋がり離職率低下
- 商社勤めの経験を活かし、新規取引先を開拓
先代の技術を活かしつつも、新社長の経営戦略で事業拡大に繋がっていったという結果が示されました。
この事例が事業承継成功の全てではないので、事業承継をする上で発生した課題に対して皆様から出た意見も間違いではない。その時々と課題の大きさで対応は変えていく必要がある。と講師からのアドバイスもありました。
7.まとめ
事業承継は、長期的な計画と戦略が求められるプロセスです。
後継者の育成には時間がかかるため、段階的な準備を行い事業承継後の安定経営と成長戦略を明確にすることが成功の鍵となります。
これらのポイントを押さえ、計画的な事業承継を進めることで、企業の成長と存続を確実なものにしましょう。
中小企業診断士
延吉 良一 氏
- 1982年 非鉄金属メーカー入社、研究部門配属 伸銅協会から研究論文賞受賞
- 1988年 表面処理工場転勤、係長として現場最前線 安全管理、コミュニケーション、リーダーシップなどの能力開発
- 1998年 工場長就任、万年赤字事業黒字化・累損一掃 経営学、財務会計、生産性向上、新製品開発などの能力開発
- 2008年 中国に会社設立、工場建設、機械装置据付け、従業員教育、創業開始 中国語学び現地従業員とコミュニケーション、創業3年で黒字化
- 2018年 コンサルタントとして独立、企業再生、事業承継支援、高齢者の相続終活の支援 中小企業診断士、事業承継士、シニアライフカウンセラーの資格取得
- 2023年 ファイナンシャルプランナー取得し、 事業承継、相続終活をお金の面からサポート
今後もOiFでは、様々な内容のセミナー、イベントを企画してまいります。皆様のご参加をお待ちしております。