はじめに
6月25日(水)、オープンイノベーションフィールド多摩八王子館にて、「利益を生み出す技術連携の始め方」を実施いたしました。
本セミナーでは、スタートアップ企業とのマッチングによる事業開発支援を専門とするCreww株式会社の中島氏をお招きし、中小企業がスタートアップとの技術連携に一歩踏み出すための具体的な事例や考え方についてお伝えいただきました。
1. 技術連携による事業開発のメリット
事業創出には、社内資源だけで完結させる「クローズドイノベーション」と、外部技術を取り込む「オープンイノベーション」の二つがあり、従来の日本企業は前者を中心に取り組んできました。
しかし、顧客ニーズが多様化、製品開発が高速化する現在では、内製だけでは対応が追いつきません。
製品開発が鈍化してしまうことによって、企業としての競争力が維持できなくなるというリスクもあります。
そんな中で、スタートアップ企業との連携による事業開発が注目されています。
スタートアップ企業は主に先進的な技術やアイデアを強みに、ゼロからビジネスモデルを創出し、急成長している企業のことを指します。スタートアップ企業が持つ先進性と掛け合わせることで、これまででは参入できなかった領域への進出や、社内では認識しきれない自社リソースの新たな利活用方法を見出すことに繋がります。
2.中小企業とスタートアップの連携事例
中小企業とスタートアップがどのように協業を成し遂げていったのか、具体的なケースを見てみましょう。
1. 資材メーカー×動画配信プロモーションスタートアップ
資材メーカーが昨今増加している浸水被害対策として、防水ボックスを開発しましたが、設置コストが高く普及しないという課題を抱えていました。そこでサイネージによる動画配信PRを専門とするスタートアップと連携し、普段はサイネージとして情報を発信し、そのサイネージの中に防水ボックスを備えられるという製品を開発し、普及を加速させることができました。
2.プレス試作メーカー×スマートグラス開発スタートアップ
あるプレスメーカーはプレス試作の職人に属人的な運営が常態化、若手が育ちにくい環境という課題を抱えていました。スタートアップ企業が開発したスマートグラスを専門職の技術伝承ツールとして、運用することで、育成を進めることができました。
プレスメーカーが職人の技を動画として残す中で、スマートグラスの撮影ノウハウを販売といった新しいビジネスの構築にも繋がった好事例です。
3.ワークショップ:最適なパートナーをどう具体化するか
企業同士の協業によって生まれる価値やメリットを知っていただけたと思いますが、リソースに限りがある中で、やはり闇雲にパートナーを探すことは現実的ではありません。自社の強みを活かして、どういった市場に出たいのか、どんなパートナーに出会いたいのか、ワークを通して考えてみましょう。
ワークテーマ
1. 会社のリソースを整理:会社のサービスや、製品における強みや特徴を整理する。精密加工技術や、顧客からの評価、小ロットへの対応、地域とのネットワークなど、自社が持っている強みを書き出す。
2. 課題の整理:社内の業務効率化や、人手不足、熟練職人の育成など、自社が抱える課題や、個別カスタマイズされた商品が良い、といった顧客の課題を整理。
3. 課題をどう解決するのかを考える:その課題は、自社だけで解決ができるのか、足りないリソースは何か、他社のサービスで解決できるか。
ワークに参加して
現地参加の方には行ったワークの内容をアウトプットしていただきました。
クリーニングの技術を活かし、洗剤を開発したという参加者様はワークを通して、自社製品に「強力な洗浄力」「洗った後の撥水性」が強みであることを共有してくださいました。
これまではアウトドア好きな人に道具を洗ってもらうといったユーザーを想定していたが、ワークや講師からのフィードバックを通し、新しい販路の方向性が見えてきたといったお声をいただきました。
4.まとめ
他社との協業やオープンイノベーションと聞くとハードルが高いという印象がある方も少なくないかと思いますが、
今セミナーの事例では1社の製品だけではなかなか普及しにくかった商品に、サイネージという要素を足すことで、販売を大きく伸ばすことができたという事例もありました。
このような他社との連携は決して遠いものではなく、既存製品の販売数をもっと増やすにはどういう要素があればよいのかなど、皆様が日々向き合っている販売や営業などの延長線上にあるものといえるのではないでしょうか。
セミナーをきっかけに是非自社製品の強みは何か、もっと売るにはどうすればよいのか、改めて整理し、向き合う機会に繋げていただければと思います。
Creww株式会社
Business Development Dept. Director
中島 克也 氏
・大学在学時に学生ベンチャーに参画。その後、独立系ベンチャーキャピタルや大手人材会社で新規事業立ち上げ・マネジメントに携わる。
・2016年にCrewwのビジョンに共感し参画。オープンイノベーション事業や社内人事、SaaS事業の責任者としてサービス立ち上げに従事。
・現在はオープンイノベーション事業やスタートアップ支援事業などの事業を統括している。
今後もオープンイノベーションフィールド多摩 八王子館では多摩地域の中小企業の皆様にとって有益な情報を届けてまいりますので、足をお運びください。