はじめに
「DXに取り組みたいが、何から始めればよいかわからない」
「ツールを導入してみたものの、業務が変わった実感がない」
こうした悩みは、多くの中小企業で共通して聞かれます。
オープンイノベーションフィールド多摩 八王子館では、DXを実務レベルで学ぶ全3回シリーズの最終回として「DX相談会」が開催されました。
これまでの講義内容を踏まえ、実際の業務にどう落とし込むかを具体的に考える機会となりました。
本記事では、前半の振り返りセミナーと後半の相談内容を整理し、中小企業が無理なくDXを進めるためのヒントを紹介します。
セミナーパート
DXは段階的に進めることで現実になる
前半では、シリーズ第1回・第2回の内容を振り返りながら、DXの進め方が改めて整理されました。
DXは一度に実現するものではなく、段階を踏んで進めていく必要があります。
・紙などの情報をデジタル化する
・業務をデジタルで回せる形に整える
・データを活用して組織やビジネスを変えていく
この順序を飛ばしてAIなどを導入しても、期待した効果を出すことは難しく、
背景には、人手不足や生産性向上、競争力維持といった多くの中小企業に共通する課題があります。
情報の一元管理が業務改善の出発点になる
講師の企業では、紙やExcel中心の業務から段階的にデジタル化を進め、情報の一元管理へ移行しています。
原価情報やトラブル履歴、業務フローなどをデータベースとして結び付けることで、必要な情報をすぐに確認できる環境が整います。
その結果、見積作成にかかる時間が短縮されるなど、日常業務の効率化につながりました。
AIと自動化が業務の進め方を変える
データベースとAIを組み合わせることで、業務の標準化や引き継ぎもスムーズになります。
作業の様子を動画で記録し、AIによってマニュアル化することで、担当者が変わっても必要な情報をすぐに共有できる状態を作ることができます。
また、クラウドストレージと連携した自動処理の仕組みを構築すれば、ファイルを置くだけで整理や登録が行われ、手作業の負担を大きく減らすことができます。
こうした取り組みは特別な企業だけのものではありません。小さな整理と改善の積み重ねで実現してきたことです。
相談会パート
現場の悩みをその場で共有
後半は、参加者それぞれが抱えている具体的な悩みについて話し合う時間となりました。
ツールの操作方法だけでなく、「実際の業務でどう使うか」という視点でのやり取りが多く見られました。
小規模組織でも無理なく始められる
少人数の企業でも活用できるのかという疑問に対しては、必ずしも複雑な仕組みを作る必要はないという話がありました。
メンバー情報を整理し、業務やToDoと紐づけて管理することで、役割が明確になり、組織の規模に応じて無理なく運用できるとのことです。
属人化を防ぐための知識の残し方
多くの参加者が感じていたのが、業務が特定の担当者に依存してしまうという問題でした。
作業手順やノウハウを記録として残しておくことで、
・担当者が変わっても業務が止まらない
・教育にかかる時間を減らせる
・同じミスを繰り返さない
といった効果が期待できます。
日々の業務の積み重ねが、将来の大きな資産になるという考え方が印象的でした。
大量データは「整理」から始める
DXに取り組みたいが何から始めればよいかわからない、という悩みも多く聞かれました。
その場合は、ツール選びり先にデータ整理を行うことが重要です。
基本となる流れは次の通りです。
・データを整理する
・業務の流れを把握する
・データ同士の関係を理解する
・適したツールを選ぶ
AIを活用すれば書類の自動分類なども可能になり、大量のデータにも対応できるようになります。
情報が散らばっている状態をどう改善するか
部門ごとに異なるツールを使っているため、必要な情報を探すのに時間がかかるという悩みも共有されました。
情報を一か所にまとめ、必要に応じて外部データへリンクする形にすると、全体像を把握しやすくなります。
保管場所と参照場所を分けるという考え方が有効です。
社外との共同作業をスムーズにする
協力会社との情報共有についても具体的な方法が話題になりました。
必要な部分だけを共有することで、進捗状況をリアルタイムで確認できる仕組みを作ることができます。
これにより、
・メールのやり取りを減らせる
・常に最新情報を共有できる
・作業状況が見えるようになる
といったメリットがあります。
まとめ
DXは特別な技術ではなく日々の改善の延長線上にある
今回の相談会を通して感じられたのは、DXは高度なIT導入ではなく、業務を整理し仕組みにする取り組みだということです。
・データを整える
・小さく始める
・成果を確認しながら広げる
このサイクルを繰り返すことで、中小企業でも無理なくDXを進めることができます。
AIやノーコードツールは強力な支援になりますが、最も重要なのは自社の業務を理解することです。
それこそが、シリーズ全体を通して伝えられた共通のメッセージでした。
グリッターテクノ株式会社 代表取締役
山下 悟郎 氏
■経歴
2008年~外資系メーカーにてプラント向け省エネ提案に従事。
2022年にサラリーマンから個人事業承継。八王子の金属部品加工業、グリッターテクノ株式会社を承継する。
その後2023年、2024年にも小規模の製造業を事業承継し、現在3社の経営を手がける。
1社目を承継した際、昔ながらの紙とFAXおよびExcelでの管理に危機感を覚え、Notionを活用した独自の生産管理システムを開発。現在は3社共通のプラットフォームとして活用している。
図面データ、見積、生産管理から管理会計まで一貫したシステムを構築し、PC未経験者でも3ヶ月程度で習得できる使いやすさを実現。複数の町工場を効率的に経営するための事務負荷の低減及び業務の効率化に成功している。
この経験を活かし、中小製造業のデジタル化支援や、事業承継に関するコンサルティングも行う。町工場の持つ力を最大化することをミッションに掲げ、中小製造業の支援と事業継続の両立に取り組んでいる。
所属:グリッターテクノ株式会社
専門分野:非鉄金属をメインに、プラスチックや難削材
(チタン、インコネル、ハステロイ等)の加工
主な実績:中小企業庁「PMI事例集」に掲載
東京都商工会連合会「多摩・島しょ経営支援拠点」主催フォーラムに登壇
日本政策金融公庫の事例集に掲載
今後もオープンイノベーションフィールド多摩 八王子館では多摩地域の中小企業の皆様にとって有益な情報を届けてまいりますので、足をお運びください。