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中小企業の広報・PR戦略セミナー― 島田電機製作所の事例に学ぶ「ファンを生む広報」 ―


はじめに|優れた技術だけでは選ばれない時代

本セミナーでは、エレベーター用ボタンの製造で国内トップシェアを持つ株式会社島田電機製作所の広報担当者が登壇し、自社の取り組みを通して中小企業における広報・PRの考え方が紹介されました。
講演の中で印象的だったのは、「知られていなければ存在していないのと同じ」という言葉です。
どれほど高い技術や品質を持っていても、その価値が伝わらなければ選択肢に入ることはありません。特にBtoB取引では、最初の候補に挙がらなければ商談につながらないため、認知は事業活動の出発点ともいえます。
多摩地域の中小企業にとっても、自社の強みをどう伝えるかは身近で重要なテーマです。本セミナーは、そのヒントを具体的な事例とともに示す内容となりました。


広報は「伝えること」以上に「関係を築くこと」  

PRという言葉から、宣伝やプレスリリースを思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし講演では、PRの本質は社会や顧客、社員との関係づくりにあると説明されました。
企業を取り巻く人々がその存在や考え方を理解し、共感し、応援したいと思える状態をつくること。
それが結果として、顧客との長期的な関係や採用、ブランド価値の向上につながっていきます。
特に強調されたのは、まず社員をファンにすることの重要性です。
社内に共感がある企業は、その雰囲気や姿勢が自然と外部にも伝わります。  


「知っている」ことが選択の前提になる  

講演では、同じ条件の商品であれば、人は知っている企業やブランドを選びやすいという例が示されました。
品質や性能が同じでも、知られていない企業は比較の対象になりません。
多くの中小企業が直面するのは、競争に負ける以前に、競争の土俵に立てていないという状況です。
まずは存在を知ってもらうこと。その積み重ねが次の機会を生み出します。



製品を伝えるか、企業を伝えるか  

PRの方向性として、二つの考え方が紹介されました。
・プロダクトPR
製品の性能や品質、価格などを伝える方法です。
主に購買担当者や意思決定者に向けた情報となります。
・コーポレートPR
企業の姿勢や理念、ストーリーに共感してもらう方法です。
求職者や地域社会、取引先など幅広い層に影響します。
島田電機製作所は後者に力を入れています。
製品の良さだけでなく、企業として何を大切にしているのかを伝えることで、「この会社と関わりたい」と思ってもらうことを目指しています。



ニッチな分野で存在感を発揮する  

同社はエレベーター用ボタンや到着灯という専門領域に特化し、オーダーメイド製品を提供することで国内シェア60%以上を占めています。
幅広い分野で競争するのではなく、特定の分野で強みを磨くことで独自の存在感を確立しています。
自社の得意分野を見極め、その価値を分かりやすく伝えることの重要性を示す事例です。  



人を中心に据えた企業づくり  

同社の取り組みの根底にあるのは「人中心の経営」という考え方です。
活動の柱として掲げられているのは次の三点です。
・心を動かすものづくり
・人中心の組織づくり
・事業活動によるファンづくり
製品の品質だけでなく、企業の姿勢や文化そのものを伝えることで、長く応援される関係を築いています。



社員が企業の魅力を語る存在になる  

外部へのPR活動を支えているのは、社内の共感です。
社員が自社に誇りを持ち、その価値を自分の言葉で語れる状態になることが重要とされています。

同社では価値観を重視した採用や、社員同士を称え合う仕組みなどを通じて組織の一体感を高めています。
社員一人ひとりが企業の魅力を伝える担い手となることで、発信の幅が自然と広がります。  


社会との接点を広げる取り組み

メディア対応や講演、展示、工場見学など、同社は多様な方法で社会との接点をつくっています。
広報担当者だけでなく社員全員が関わる「全員広報」という考え方も特徴的です。
実際に働く人の言葉には、企業の雰囲気や価値観がそのまま表れます。
そのリアルさが、企業への理解と信頼を深めるきっかけになります。


体験を通じて理解が深まる

同社は企業の世界観を体験できる場を提供し、幅広い層との交流を行っています。
製品の説明だけでなく、企業文化やものづくりへの姿勢に触れてもらうことを重視しています。
実際に見て、聞いて、感じることで理解が深まり、共感へとつながります。
こうした取り組みは、一度きりの接点ではなく、長期的な関係づくりに結びついていきます。


共感が新たな可能性を生む

PR活動の積み重ねによって、社内外にさまざまな変化が生まれています。
・社員の主体性が高まる
・採用応募の質が向上する
・顧客との関係が深まる
・新しい事業の機会が広がる
共感によって人が動き、その動きが企業の成長につながる好循環が生まれます。



おわりに|企業の価値は人との関係の中で育つ  

今回の講演からは、広報・PRが単なる情報発信ではなく、人とのつながりを育てる活動であることが伝わってきました。
大きな組織でなくても、特別な設備がなくても、自社の考え方や取り組みを丁寧に伝えることはできます。
その積み重ねが理解や共感を生み、企業を支えてくれる人との関係を広げていきます。
多摩地域の中小企業にとっても、自社の魅力を見つめ直し、未来につなげていくための多くのヒントが得られる講演となりました。  



株式会社 島田電機製作所
企画部企画チーム主任
小倉 心愛 氏













2001年生まれ。東京都出身。
2021年に株式会社島田電機製作所へ新卒入社。
企画担当としてブランディング活動に幅広く携わり、2024年には企画チームの立ち上げに伴い主任に就任。
現在は、ブランディングを軸に、PR・採用・体験施設「OSEBA」や工場見学の運営、さらに社内の組織づくりにも力を注いでいる。
プレイヤー気質を活かしつつ、最近はマネジメントスキルの習得にも奮闘中。
やる気フレーズは「大盛り無料」。

「共感で会社を強くする、“内と外”の橋渡し役」


 
 
今後もオープンイノベーションフィールド多摩 八王子館では多摩地域の中小企業の皆様にとって有益な情報を届けてまいりますので、足をお運びください。


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