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技術を世界初の製品へ ―世界最小けん玉に学ぶ、製品開発実践術― 開催レポート


はじめに

「世界初の製品」と聞くと、最先端技術や大きな企業の取り組みを思い浮かべる人も多いかもしれません。
今回のセミナーは、そんなイメージを少し横に置いて、「今ある技術で、どこまでできるのか」を考える時間になりました。

オープンイノベーションフィールド多摩 八王子館で開催された本イベントでは、株式会社そろはむ 代表取締役・長谷川貴彦氏が登壇。
世界最小のベアリング内蔵けん玉「SG Kendama pico」の開発を軸に、アイデアの生まれ方から協業、製品化、そして世の中への届け方までが語られました。


なぜ、この話が中小企業にとって身近なのか

多摩地域には、高い技術力を持つ中小企業が数多くあります。その一方で、
技術はあるけれど、製品化まで踏み出せていない
他社と組んで何かできそうだが、進め方が分からない
作ったあと、どう広げればいいのか悩んでいる
そんな声も少なくありません。
今回紹介された事例は、特別な設備や大きな投資から始まったものではありません。
「自分たちの現場で起きていたこと」から始まり、少しずつ形になっていった点が、多くの参加者にとって身近に感じられた理由だったようです。


「自分たちが欲しいもの」から始まったけん玉

SG Kendama picoは、全高29.4mm、重さ約3.4gという極小サイズのけん玉です。直径3mmの超小型ボールベアリングを内蔵し、小さくても実際に技ができる構造になっています。
ただ、この製品は「世界最小を作ろう」という目標から生まれたものではありません。
八王子市内の小学校で行っている「あそびの出前」で使っていた極小けん玉は、子どもたちの反応がとても良い道具でしたが、20年以上前のビンテージ品で、壊れたら終わりという状態だったそうです。
「必要だから、自分たちで作ることにした」
この判断が、すべてのスタートでした。



技術を“伝わる価値”にする工夫

小さいだけでは、製品としての魅力は伝わりにくくなります。 
そこで選ばれたのが、医療機器やドローンにも使われる超小型ボールベアリングでした。 

この選択によって、「市販品として世界最小のベアリング内蔵けん玉」という分かりやすい特徴が生まれます。 
技術的な話を詳しく説明しなくても、「なるほど」とイメージしてもらえる形です。 

製品開発では、技術そのものだけでなく、「どう言葉にするか」も大切だということが、自然と伝わってくる場面でした。 

図形 



無理をしない協業が、形になるまで続いた理由

SG Kendama picoは、そろはむ、NSKマイクロプレシジョン、ミツミ製作所の3社による協業から生まれました。
印象的だったのは、特別な体制を組まず、日常業務の延長で進められていたことです。
それぞれが得意なことを持ち寄り、無理のない範囲で役割を分担する。その積み重ねが、結果として製品化につながっていきました。
「協業」という言葉から想像するよりも、ずっと現実的で、続けやすい関係性だったように感じられます。



作って終わらせないために考えたこと

セミナーでは、完成後の動きについても具体的な話がありました。
プレスリリースを起点にした発信、Webメディアや動画での紹介、通販媒体での販売など、少しずつ広がりを作っていった結果、当初想定していたけん玉ユーザー以外にも製品が届いていきます。
「開発して終わりではなく、どう届けるかまで考える」。
この姿勢が、製品を“趣味の延長”で終わらせなかった理由の一つだったのかもしれません。



中小企業だからこそできた判断

今回の話を通して見えてきたのは、中小企業ならではの動きやすさです。
大きな予算や複雑な承認を前提にせず、まずは小さく試す。
うまくいきそうなら育てていく。
その判断を、責任を持ってすぐに下せることが、プロジェクトを前に進めていました。


おわりに

SG Kendama picoは、「世界最小」という結果だけを見ると特別な製品に見えます。
しかし、その裏側にあったのは、
現場での素直な課題意識
技術を伝わる形にする工夫
無理をしない協業
届け方まで考えたものづくり
という、どれも現実的な積み重ねでした。
本セミナーは、「自社の技術で何かできるかもしれない」と考えている人にとって、次の一歩を考えるヒントが詰まった時間だったと言えそうです。



株式会社そろはむ
代表取締役 長谷川 貴彦 氏





 





スケバン刑事を見てヨーヨーを始めるも子供の頃は上手くならず。大人になりハイパーヨーヨーブームの黎明期に立ち会いヨーヨーにのめり込む。
大学卒業と当時に輸入雑貨の会社に在籍しながら、ヨーヨープロとして働き出す。 2002年に世界チャンピオンになり、その後合計3回優勝を果たす。
ヨーヨーチャンピオンとして多くのメディアに出演、芸能界での指導なども多数行う。
2006年ごろから中野ブロードウェイで、実店舗でのヨーヨー専門店をスタート。
2011年に秋葉原への移転を期に八王子で独立。株式会社そろはむを立ち上げる。
ストリートけん玉ブームの黎明期からけん玉業界に関わり、ハンドスピナーのブームの際には最大手の一つとなるなどヨーヨー以外への活動を広げる。
2023年にはこまの世界大会、World Spintop Contestを八王子に招致し、開催。ITSA(International Top Spinners Assosiasion)チェアマンとなる。
現在は高円寺に実店舗を構え、ヨーヨー、こま、けん玉などのスキルトイの専門メーカーとして全国への流通をしている。


■株式会社そろはむ

前進となる株式会社ディップスにて、1996年よりヨーヨーの輸入販売を行い、2002年に楽天市場に出店、その後2006年に直営の実店舗「中野ブロードウェイ店」をオープン。
2011年10月11日に株式会社そろはむを設立、ディップスより独立。
中野店を閉店し、秋葉原に移転。11月より西八王子店をオープン。
ヨーヨー業界のパイオニアとして店舗運営、流通、企画開発、イベント出演と、ヨーヨーに関するあらゆる業務を請け負う。


 
 
今後もオープンイノベーションフィールド多摩 八王子館では多摩地域の中小企業の皆様にとって有益な情報を届けてまいりますので、足をお運びください。


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