12月23日(火)、「東京の木を活かす、地域資源×循環型ビジネスの可能性」を実施いたしました。
地域で事業を続けていると、「この場所ならではの強みとは何か」「身近にある資源を、どう事業に組み込めばよいのか」と考える場面は少なくありません。
特に工務店や林業、木材加工など、地域に根ざした仕事ほど、価格や規模ではなく、自分たちらしい軸をどうつくるかが常に問われます。
多摩地域で住宅づくりに取り組んできた 株式会社小嶋工務店 は、そうした中で地域の木材に着目し、「TOKYO WOOD」として住宅づくりに取り込んできました。
木材そのものだけでなく、育った場所や関わる人の存在を含めて伝える、その積み重ねを事業として続けてきました。
この取り組みについて、オープンイノベーションフィールド多摩 八王子館で行われた講演の中で、同社代表の 小嶋智明 氏が、自身の経験をもとに話しました。
1.会社の立て直しから始まった取り組み
小嶋氏は、会社が経営的に厳しい状況にあった時期を振り返り、自社の良い点と改善すべき点を書き出したことから話を始めました。
改善点には優先順位をつけ、一つずつ対応していく。その過程で、経営に関わる数字を把握し、自ら管理する体制へと切り替えていったといいます。
当時は資金面に余裕がなく、広告や大きな投資は難しい状況でした。
そのため、まず社内の体制や仕事の進め方を見直し、できることから着手していく判断を重ねてきました。
2.根拠を積み上げる家づくり
住宅づくりについては、「良い家」であることを感覚的に伝えるのではなく、構造や断熱といった要素について理由を説明できる状態を目指してきました。
なぜその仕様を選ぶのか、なぜその方法を取るのか。一つひとつを確認しながら、検証と見直しを重ねてきたといいます。
こうした考え方は、特別な手法というよりも、日々の仕事の中で積み上げてきたものです。
現場での判断や説明が、後から事業の軸として形になっていきました。
4.TOKYO WOODという名前を掲げるまで
TOKYO WOODは、当初「多摩地域の木材」を使う取り組みから始まりました。
外部にも伝えやすい名称として多摩産材というシンプルな呼称から、「TOKYO WOOD」を掲げ、林業家、製材所、加工、工務店が連携する体制を整えながら、東京を代表するブランドに育て上げました。
山を訪れる機会を設けるなど、木材がどこで育ち、誰が関わっているのかを伝える取り組みも続けてきました。
素材としての木材だけでなく、その背景を含めて住宅づくりに組み込んできた点が特徴です。
5.事業として続けるために考えてきたこと
TOKYO WOODの取り組みは、木材の活用にとどまらず、森林の循環や住環境、人材の分野へと広がっています。
現場で働く職人が、自ら考え、段取りできる存在になることを目指し、将来像を示しながら育成にも取り組んできました。
住宅の温熱環境や健康面についても、日々の仕事の延長として向き合っているテーマの一つです。
いずれも、事業として続けていく中で必要だと感じたことに取り組んできた結果でした。
6.続けてきたことの積み重ね
経営については、日々の管理を続けること、関わる人との関係を大切にすることを重視してきたといいます。
地域の木材を使い続ける理由についても、これまでの仕事の積み重ねと結びつけながら話しました。
目新しい施策を打ち出すよりも、決めたことを続けていく。
その積み重ねが、現在の年間80棟の注文住宅、売上約30億円という成果につながっています。
まとめ
多摩地域の木材を起点としたこの取り組みは、特別な資源や条件があったから始まったものではありません。
身近にある素材や関係性をどう扱い、どう事業の中に位置づけ、どう続けていくか。その判断の積み重ねが、形になってきました。
自社の周囲を見渡したとき、すでに使っているものや関わっている人の中に、まだ言葉になっていない価値があるかもしれません。
この記事が、その存在に目を向けるきっかけになればと思います。
株式会社小嶋工務店 代表取締役
株式会社小嶋産業 代表取締役
一般社団法人TOKYO WOOD普及協会 相談役
小嶋 智明 氏
1989年にハウスメーカーへ入社し、現場監督として70棟以上の施工を担当。
その後、営業職を経て1995年に父の経営する小嶋工務店へ入社。そこで外断熱二重通気工法「ソーラーサーキット」と出会い、快適な家づくりを本格的に追求する。
しかし入社直後に阪神・淡路大震災が発生し、木造建築は逆風にさらされ、会社も経営危機に直面。資金繰りと人間関係という二つの「地獄」を抱えながらも、地元東京の森に活路を見出した。
「東京の木で家を建てる」という理念を掲げ、林業家や製材所と粘り強く連携。独自の品質基準を設け、天然乾燥材を用いたブランド「TOKYO WOOD」を誕生させた。
2009年に代表取締役に就任後は、多摩産材の本格活用を推進し、2012年に「TOKYO WOOD普及協会」を設立。国の長期優良住宅事業への採択や数々の表彰を重ね、TOKYO WOODを東京を代表するブランドへと育て上げた。
現在も「東京の森を守り、育て、暮らしにつなぐ」という理念のもと、創業60周年を迎えた企業として、年間80棟の注文住宅を手掛け、売上約30億円を達成。林業と建築の垣根を越え、地域資源を活かした循環型ビジネスで東京・多摩のまちづくりを担い続けている。
今後もオープンイノベーションフィールド多摩 八王子館では多摩地域の中小企業の皆様にとって有益な情報を届けてまいりますので、足をお運びください。