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デザイン強化から始まった新製品開発ストーリー― 大学と企業の共創が生んだ成果 ―開催レポート



はじめに

12月9日(火)、オープンイノベーションフィールド多摩八王子館にて、「デザイン強化から始まる新製品開発ストーリー~大学と企業の共創が生んだ成果~」を実施しました。本セミナーでは、株式会社EVTD研究所代表取締役の小池哲夫氏と、東京造形大学教授の森田敏昭氏を講師としてお招きし、産学連携による蓄電池モジュール開発の全プロセスを中心にお話しいただきました。

会場には実際の蓄電池モジュールが展示され、参加者は手に取りながら講演を聴くことができました。技術課題に直面した企業が、どのようにして大学と出会い、3D CADや3Dプリンターを駆使しながらプロトタイプを完成させたのか。両講師は成功だけでなく課題も率直に共有し、産学連携のリアルを伝えました。

1. 企業が抱えた技術課題:EVTD研究所の挑戦


EVTD研究所の事業は、EV化技術やリチウムイオン蓄電池電源の開発を専門とし、小型EVの試作、太陽光設備との連携、遠隔監視による運用支援など、実用性を重視した取り組みを進めています。

今回、お話しする蓄電池モジュールには、電極端子の露出による安全性の問題、冷却構造の設計、カスタマイズ性と量産性の両立、デザインと機能の統合といった課題がありました。
小池氏は「これらの課題を解決するには、外部の専門家の知見が必要だった」と当時の状況を振り返りました。


2. パートナー探索から連携開始まで

複数の外部パートナーに相談を試みましたが、技術要件やコストが折り合わず、適切な協力先が見つかりませんでした。そこで東京都中小企業振興公社のマッチング支援を活用し、課題整理とパートナー探索を進めました。

公社のコーディネーターから東京造形大学の提案を受け、小池氏は「技術への深い理解と丁寧なコミュニケーション、そして妥当な研究費設定が決め手になった」と連携開始の経緯を語りました。


3. 大学のデザインアプローチ:実務型の産学連携


森田教授は建築、プロダクトデザイン、地域連携など幅広い実務経験を持ち、生活者視点と技術的要求をつなぐデザインを専門としています。

森田教授は今回の案件について「教育目的の共同プロジェクトとは性質が異なる。今回は構造やシステムを伴う高度なプロダクトで、仕様が明確な実務寄りの内容だった」と位置づけ、短期間で成果を求められたこともあり、教授と助手が中心となる実務体制で取り組んだと説明しました。学生は一部補助にとどめ、専門性とスピードを重視する実務型の産学連携として臨んでいます。


4. 3D CADと3Dプリンターが実現した「見える化」


蓄電池モジュールは、電極配置、冷却経路、セル配置など立体的な構造理解が欠かせない製品です。森田教授は3D CADによる立体モデル化とモックアップを制作し、内部構造を実物に近い形で見せることで、部品干渉、冷却構造、組み付け姿勢、内部スペース、全体形状などを短時間で共有できるようにしました。

小池氏は「従来は平面情報を基に検討していたが、立体モデルにより議論が大きく進展した。確認が圧倒的に早くなり、スピードが5〜6倍になった」と振り返りました。

森田教授は小池氏から受け取った情報を基に、約1週間で立体モデルと初期案を作り上げ、これによりプロジェクトの方向性が早期に固まりました。


5. 高品質な試作品と量産化の壁

森田教授が制作した試作品は、電極を隠す構造、冷却性、スナップ構造など完成度が高いものでした。一方で小池氏は量産化に向けた課題を率直に語りました。金型コスト、製造工数の問題があり、企業側は押し出し成形などを活用し、量産に適した構造へと自社で再設計を進めています。

森田教授は「量産設計にも対応可能だった」としながらも、費用面の懸念などから企業側の相談頻度が減少した経緯を明かしました。
ここから見える重要なポイントとして、初期段階で役割分担を明確にすること、量産フェーズでの合意形成を行うこと、継続的にコミュニケーションを保つことが挙げられます。


まとめ

今回はEVTD研究所と東京造形大学の事例から産学連携が実務フローを踏まえ、

「公的なマッチング支援の活用」
「3Dモデリングを用いた見える化」
「製品開発の各段階で直面する課題と乗り越え方」

について、学んでいただきました。

森田教授は製品開発に挑戦したい企業に向けて、「造形大学は美大というイメージがあると思うが、ぜひ気軽に相談してほしい。今後よりオープンな場にしていきたい」という心強いメッセージをいただくことができました。

本イベントが、産学連携による製品開発を検討している企業にとって、一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。



株式会社 EVTD 研究所
代表取締役 小池 哲夫 氏






 

2007年まで日野自動車株式会に従事し、国内初のディーゼルエンジンの噴射タイミングの電子制御、世界初のディーゼルエンジン内にモーターを内蔵させたハイブリッド車の開発及び非接触型充電器式プラグインハイブリッドバスの研究等を実施。

■受賞歴
1992年4月
機械学会賞ディーゼル・ハイブリッド・システム採用の低公害低燃費大型バスの開発
1992年5月
自動車技術賞ディーゼル・ハイブリッド・システム採用の低公害、低燃費大型バスの開発
1992年11月
機械振興協会賞ディーゼル・ハイブリッド・システム採用の低公害低燃費大型バスの開発

■特許取得件数
国内外特許取得件数:43件(内USA特許:4件、英国特許:1件、国内特許:38件
■専門分野
①システム設計、②電子制御、③リチウムイオン電池の制御技術等



東京造形大学 教授 森田 敏昭 氏





 







 

1962年京都市生まれ。1986年より株式会社黒川雅之建築設計事務所に勤務。
1991年に有限会社エル・アイ・シー/森田敏昭設計事務所を設立。2000年から2007年まで札幌市立高等専門学校に勤務し、2007年より東京造形大学に着任。
現在は、地方都市でのものづくりにおける「デザイン主導型の商品開発システムの有用性」について研究を進めている。

■受賞歴
2002年 グッドデザイン賞
2003年 北の生活産業デザインコンペティション 大賞・銅賞
2005年 グッドデザイン賞
2006年 グッドデザイン賞/JID賞ビエンナーレ佳作/ほっかいどうグッドデザインコンペティション 大賞
2007年 北海道グッドデザインコンペティション 銅賞/芸術工学会 平成19年度論文賞
2013年 グッドデザイン賞
2024年 グッドデザイン賞


 
 
今後もオープンイノベーションフィールド多摩 八王子館では多摩地域の中小企業の皆様にとって有益な情報を届けてまいりますので、足をお運びください。


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