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「AIに代替されない『問題発見力』の鍛え方」開催レポート


2026年5月21日、オープンイノベーションフィールド多摩 八王子館にて、「AIに代替されない『問題発見力』の鍛え方」を開催しました。

講師は、株式会社ウエーブプラネット 代表取締役 ツノダフミコ 氏です。

生活者研究、各種調査、コンセプト・ナビゲーション、コンサルティングなどを通して、トイレタリー ・飲料・食品・化粧品・住宅・家電・住設など、 さまざまな大手企業のマーケティング支援に携わり、時代と生活者の価値観を言語化していくプロセスに定評がある会社です。

今回のイベントでは、AI時代にこそ必要になる「問題発見力」をテーマに、講義とワークを通じて、自分の中にあるモヤモヤを言葉にして整理していきました。

生成AIを使えば、情報収集や文章作成、分析はとてもスピーディーに進められるようになる一方で、「そもそも何を聞けばいいのか」「何を問題として考えればいいのか」は、人が自分で考える必要があります。



「問題を解く前に、何を問題とするか」を考える

生成AIによって、情報収集や分析は格段に楽になりました。
ただ、情報が増えすぎることで、かえって「自分ごとにならない」と感じる場面もあります。

AIは、質問をすればたくさんの答えを返してくれます。
けれど、その前に「何を聞くのか」「どの問題に向き合うのか」を決めるのは、今のところ人間の役割です。

問題発見力とは、頭の中のモヤモヤを整理し、自分で納得できる答えに近づくための力。

しかも、問題発見力は特別なセンスではなく、鍛えられるものです。
「ひらめき」や「気づき」にもコツがあり、型を使うことで少しずつ身につけることができます。
そう聞くと、「自分にもできそう」と感じやすくなります。


考えることが、仕事の手応えにつながる

印象的だったのが、実際の企業研修でのエピソードです。

ある専門小売業の若手社員が、日々の仕事を「作業」のように感じ、退職を考えていたそうです。
ところが、考えるコツを学び、目の前の仕事の意味やゴールを自分で捉え直せるようになると、「仕事って楽しいんだ」と感じるようになり、退職を思いとどまったとのことでした。

自分で気づく。
自分で考える。
その結果、行動が変わり、お客様の反応や成果に手応えを感じる。

この流れは、業種や職種を問わず、多くの人に当てはまりそうです。

AIに任せられることが増えていく時代だからこそ、人が「考える楽しさ」や「気づく面白さ」を持ち続けることが、仕事の手応えにもつながっていくのかもしれません。


AI時代に必要なのは「問いを立てる力」

これからの時代に必要になるのは、「考える力」や「問いを立てる力」です。
さらに、仮説を立てて検証する力、出てきた情報を評価し、選ぶ力も欠かせません。

知識や技術そのものは、AIを活用することで補える場面が増えています。
しかし、AIが出した情報をどう受け止めるのか。
どの情報を選び、何を判断材料にするのか。
そこには、人の経験や感情、現場感覚が関わってきます。

AIには感情や経験がありません。
だからこそ、自分が見てきたこと、感じてきたこと、現場で違和感を持ったことが、問題発見の出発点になります。

「AIが出すのは答えだけ。問いを立てるのは人間の役割です。」
今回のイベント全体を通じて、特に印象に残るメッセージでした。



モヤモヤを整理する「コンセプトピラミッド®技法」

今回の中心となったのが、著書「いちばんわかりやすい問題発見の授業」にもまとめられている、ツノダ氏が長年のプロジェクト経験から体系化してきた「コンセプトピラミッド®技法」です。

この技法は、頭の中にあるモヤモヤを、いきなり結論にしようとするものではありません。
まず小さな「ピース」として書き出し、それを意味の近いもの同士で整理していきます。

ここで使われたのが、ジグソーパズルのたとえです。
ジグソーパズルを進める時は、まずピースを広げます。
次に、色や形が似ているものを集めます。

少しずつまとまりができてくると、「これは花の部分かもしれない」「ここは背景かもしれない」と全体像が見えてきます。

問題発見も、それに近い考え方です。
たとえば、アンケートの自由回答や会議で出た意見を整理する時、多くの場合は「件数が多いもの」や「目立つ意見」に目が向きます。

もちろん、件数が多い課題に対応することは大切です。
ただ、それは他社や他部署も気づきやすい、いわば“見えている問題”でもあります。

本当に考えるべき問題は、少数意見や「その他」にまとめられた声の中に隠れていることもあります。
すぐには分類できない言葉や、まだ誰も気づいていない違和感の中に、次に取り組むべきテーマが眠っているかもしれません。

だからこそ、最初から「これが本当の問題だ」と決めつけるのではなく、まず頭の中にあるものを書き出す。
それを動かしながら、似ているものを集める。
そのまとまりに名前をつける。

この流れをたどることで、自分でも気づいていなかった考えや、悩みの本質が少しずつ見えてきます。


ワークで実践した3つのステップ

後半は、自分の中で最近気になっていること、モヤモヤしていること、困っていることをテーマに決め、付箋へ書き出していきました。

まずは、頭の中にあるものを外に出すところから始まります。
考えをきれいにまとめてから書くのではなく、まずは出してみる。
この順番が大切です。


ステップ1:1メッセージを1ピースとして書く

最初のポイントは、1枚の付箋に1つのメッセージだけを書くことです。
ピースを書く時のルールは、とてもシンプルです。

40文字以内で書くこと。
体言止めにしないこと。
因果関係で書かないこと。

たとえば、「時間の使い方」だけで止めてしまうと、それについて悩んでいるのか、考えているのか、決めたいのかが曖昧になります。

「時間の使い方に迷っている」
「自由な時間を確保したい」
「何から勉強すべきか決められない」

このように文章にすると、自分が何を感じているのかが少しずつ見えやすくなります。

参加者からは、「体言止めにしないとは、どんな文章ですか?」という質問も出ました。

「〜する」「〜である」「〜したい」のように、文末まで書き切ると、自分が何を考えているのかが見えやすくなります。

最初は少し書きづらそうな様子もありましたが、手を動かし始めると、参加者それぞれのテーマに沿ったピースが少しずつ並んでいきました。


ステップ2:3枚以内でグルーピングする

次に、書き出したピースを、意味の近いもの同士でグループにしていきます。
ここで大切なのは、単語の近さではなく、意味の近さを見ることです。
同じ「時間」という言葉が入っているから同じグループ、という分け方ではなく、その文章が何を言おうとしているのかを見ていきます。

もう一つのルールは、1グループを3枚以内にすることです。
4枚以上になった場合は、2つのグループに分けます。
一見すると似ているものでも、「本当に同じグループでよいのか」と考えることで、微妙な違いに気づきやすくなります。
この「違いに気づく」作業そのものが、問題発見力を鍛えるポイントです。

ワーク中、講師は参加者の席をまわりながら、どのようにグルーピングすればよいかを一緒に確認していきました。

「わからない」が多い場合は、まず「わからないグループ」を作ってもよい。その中にも、「何がわからないのかわからない」と「原因は見えているが解決策がわからない」があるかもしれない。

講師の声かけを受けて、参加者が大きくうなずき、再び手を動かし始める場面もありました。


ステップ3:「要するに?」でラベルをつける

最後に、作ったグループにラベルをつけます。
ここで使う問いが、「要するに?」です。

このグループは、要するに何を表しているのか。
自分は、要するに何に引っかかっていたのか。
このモヤモヤは、要するにどんな状態なのか。

「要するに?」と考えることで、頭の中の言語化が進み、本来の目的やゴールに気づきやすくなります。

ワークが進むにつれて、参加者からは「なるほど」「そういうことですね」「結論、出た気がします」といった声も上がっていました。

考えが整理されていく瞬間は、見ている側にも伝わってきます。
ただ付箋を並べているだけではなく、自分の中にあった違和感が、少しずつ言葉になっていく時間でした。



紙に書くことで、頭の中がすっきりする

ワーク後には、やみくもに考えている時はストレスがかかるけれど、整理できるだけでもストレスが下がる、という話がありました。
この言葉に、参加者の皆さんが大きくうなずいていたのが印象的でした。

ネットワーキングタイムでは、参加者から「今までも通勤中に頭の中で考えることはあったけれど、実際に紙に書いてみると、自分が何に悩んでいたのか、原因はどこだったのかが明確になり、とてもすっきりした」という感想もありました。

頭の中だけで考えていると、同じところをぐるぐる回ってしまうことがあります。でも、紙に書き出して、動かして、名前をつけてみると、少し距離を置いて自分の考えを見ることができます。

「悩みが消える」というよりも、「何に悩んでいるのかが見える」。
それだけでも、次の一歩はかなり出しやすくなります。


チームで使う時のポイント

従業員を交えた複数人で行う場合についても、話題が広がりました。
複数人で行う場合は、最大6名程度までの少人数で行うこと。
それ以上の場合は、グループを分けて進めること。

また、複数人で話し合う時には、どうしても上司の意見や声の大きい人に引っ張られやすくなります。
しかし、まず紙に書くことで、声の小さい人の意見も見える形になります。

「紙に書くと、公平な状態になる」

この考え方には、参加者の皆さんも大きくうなずいていました。
職場の会議やアイデア出しで、いつも同じ人ばかり話してしまう。
本当は意見を持っている人がいても、場の空気で言い出せない。

そんな時にも、このワークは使いやすそうです。



まとめ

AIは、答えを出す力をどんどん高めています。
だからこそ、人には「何を問うのか」「何を問題として見るのか」がより大切になります。

今回のイベントでは、その考え方を講義だけでなく、実際のワークを通して体験しました。

モヤモヤを書き出す。
意味の近いものを集める。
「要するに?」と問いかける。

流れはとてもシンプルです。
でも、実際にやってみると、自分の考えが少しずつ整理されていく感覚があります。

日々の仕事の中で、「忙しいのに前に進んでいる感じがしない」「何から手をつければよいかわからない」と感じる時は、まず紙に書き出してみるだけでも、見え方が変わるかもしれません。

問題を解く前に、何を問題として考えるのか。
今回のイベントは、その大切さをあらためて感じられる時間になりました。



株式会社ウエーブプラネット
代表取締役
ツノダ フミコ氏


株式会社ウエーブプラネット 代表取締役 / 戦略コンサルタント

慶應義塾大学卒業後 、商業施設の企画開発会社にてターゲット戦略やコンセプト開発 、未来のくらし研究を担当。

1993年に株式会社ウエーブプラネットを設立。
生活者研究、各種調査、コンセプト・ナビゲーション、コンサルティングなどを通して、トイレタリー ・飲料・食品・化粧品・住宅・家電・住設など、 さまざまな大手企業のマーケティング支援に携わっている 。
時代と生活者の価値観を言語化していくプロセスに定評がある。

ワークショップ・ ファシリテーション、マーケティング研修、エグゼクティブコーチングなども多数実施 。クライアント企業のリピート率は常に9割以上。

「 協調設計技法コンセプトピラミッド®」を用いた問題発見やインサイト探索。技法研修も多数手がけている。

【著書】
『いちばんわかりやすい問題発見の授業 ―知識ゼロから3時間でプロの発見力が身につく!』(ワニブックス)





オープンイノベーションフィールド多摩では、これからも中小企業の経営改善にお役に立てるような企画を準備していきます。

次回開催されるイベントでお目にかかりましょう。スタッフ一同、国分寺館・八王子館でお待ちしております!!


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