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【八王子館2周年記念】八王子の製造業経営陣が本音で語る! ものづくり企業のオープンイノベーション戦略開催レポート


はじめに

10月28日(火)、オープンイノベーションフィールド多摩八王子館にて、「八王子の製造業経営陣が本音で語る!
ものづくり企業のオープンイノベーション戦略」を実施いたしました。
本セミナーでは、株式会社菊池製作所 執行役員小笠原氏と、株式会社イノフィス 代表取締役 乙川氏をお招きし、八王子のモノづくり企業におけるオープンイノベーションによる製品開発をテーマに、ご講演いただきました。


1.産学連携によるベンチャー企業の創出


一括一貫体制でのものづくり事業

第1部では、株式会社菊池製作所の小笠原執行役員より、同社のオープンイノベーション戦略についてご講演いただきました。

菊池製作所は1970年の創業以来、試作品製作から量産品製造までを手がける総合ものづくり支援会社です。同社の強みは金型製作から機械加工、組立まで対応できる「一括一貫体制」にあります。
2006年に「ものづくりメカトロ研究所」を開設し、産学官連携ネットワークの構築に注力してきました。現在では47大学61研究室と連携し、ロボット、医療・介護、産業情報制御など幅広い分野で共同研究を展開しています。

包括的事業支援への転換

「ものづくりだけではなく、事業化に至るプロセスを全方位で連携を構築する」ことの重要性を強調しました。製造だけでなく、販売、投資など多岐にわたる収益機会を創出する「包括的事業化支援」へと転換していることが同社の特徴です。47の大学による連携や、社内体制の構築によって、開発アイデアの具現化から量産製造、試験販売までをトータルでサポートする支援体制が紹介されました。

この産学官連携の成果として2013年12月に設立されたのが、株式会社イノフィスです。東京理科大学工学部の小林宏教授とともに、マッスルスーツの事業化を目的に立ち上げました。


2.企業協業による共同開発の成功事例


マッスルスーツで実現できること

第2部では、株式会社イノフィスの乙川代表取締役より、マッスルスーツの開発・事業化と異業種連携戦略についてお話しいただきました。
イノフィスは「生きている限り自立した生活を実現したい」というミッションのもと、人間を支援する技術を追求しています。
主力製品のマッスルスーツは、2025年4月末時点で累計販売台数は3万5千台を突破し、製造業、物流業、農業、建設、福祉、防衛産業など様々な業界で利用されています。

異業種トップメーカーとの連携

乙川氏が特に強調したのは、異業種トップメーカーとの連携による製品開発です。医療・スポーツ系サポーターを開発販売している日本シグマックスとの共同開発により「マッスルスーツSoft-Power」を製品化し、フレームのない究極のアシストスーツを実現しました。
イノフィスは未進出分野への展開やTo Bへの販路開拓のノウハウを提供する一方、パートナー企業からは医療製品クオリティサポーターの技術やTo Cの販路を提供してもらう、WIN-WINの関係を構築しています。

●他社とのコラボレーションのポイント

・「三方よしのスタンス」
・「ビジョンを明確にすること」
・「トップ同士で握ること」
・「同じ目線で汗をかいてもらうこと」

目指す目標を明確にし、互いの目線や利益といった複数の要素についてバランスを保ちながら、推進していくことが求められます。


3.パネルディスカッション「オープンイノベーションは製造業の特効薬となりえるのか」

モデレーター:NHKエグゼクティブディレクター 片岡利文氏
パネリスト:小笠原氏、乙川氏


第3部では、NHKエグゼクティブディレクターの片岡利文氏がモデレーターを務めました。片岡氏はクローズアップ現代やNHKスペシャル等の番組制作を通して、日本のモノづくり企業、製造業を追い続けてきた実績から、2社の製品開発実績を深掘りしました。

「オープンイノベーションは、ものづくり企業にとって特効薬になり得るのか」という問いに対し、小笠原氏と乙川氏は実務経験に基づいた率直な見解を示しました。

小笠原氏は「特効薬というよりも、企業の選択肢を広げる手段である」と述べました。連携には調整や手間が伴うものの、単独では得られなかった技術、情報、ネットワークを獲得できるという明確なメリットがあると指摘しました。

乙川氏は「特効薬になるかどうかは企業側の覚悟に左右される」と述べました。異分野連携には失敗のリスクがありますが、挑戦しなければ新たな市場や技術にアクセスする機会を逃すことになります。一方、小さな協業から始めて信頼を積み上げる企業は、成功確度が高いといいます。

二人の議論から導かれた結論は、オープンイノベーションは万能薬ではないが、挑戦の意思を持つ企業にとっては強力な武器になり得るというものでした。


まとめ

今回のイベントでは、小笠原氏が語る産学官・スタートアップ連携の現場知、乙川氏による異分野共同開発の成功プロセス、パネルディスカッションから見える製品開発への姿勢といった実践的知見を共有いただくことができました。

地域の中小企業経営者、新規事業担当者、スタートアップ、自治体職員にとって、「どこから取り組むべきか」「どのような壁に直面しやすいのか」「成功する企業はどんな姿勢を持っているのか」を理解するうえで有益な示唆が多く含まれていたかと思います。

多摩地域の製造業が蓄積する経験と知見は、今後の共創や連携を推進する基盤となるものであり、地域のイノベーションを支える重要な資源になるといえます。

今後も地域の知見や技術が出会えるハブとなる施設を目指し、日々運営して参ります。
開館3年目に突入したオープンイノベーションフィールド多摩をどうぞよろしくお願いいたします。



株式会社菊池製作所 執行役員
ものづくりメカトロ研究所所長
小笠原 伸浩(おがさわら のぶひろ) 氏

  • ■経歴
  • 1982年~2009年迄、産業機器通信メーカにて開発業務に従事し、同年2009年より菊池製作に入社し民生及び産業業界における運用を見据えたものづくりで培った経験を活かし主に産学官連携及びスタートアップ連携におけるマネージメント 業務に従事し現在に至る。

株式会社イノフィス 代表取締役 
乙川 直隆(おとがわ なおたか)氏

■経歴

国立研究開発法人産業総合技術研究所にて、近赤外センサの開発に従事した後、当該技術を事業化するためのスタートアップに参画。
2007年に一括一貫の総合モノづくり力が強みの株式会社菊池製作所に入社、プロジェクトリーダーとしてIPO業務に従事。
2012年に経営企画担当取締役に就任。20社以上のスタートアップに出資・事業化連携、「ロボットものづくりスタートアップ支援ファンド」の設立など、包括的な事業化支援体制を構築する新規事業に従事し、テック系スタートアップを中心に100社以上との連携を構築。
イノフィスは創業時から社外取締役などとして関わり、2023年3月に代表取締役に就任


NHK エグゼクティブ・ディレクター
片岡 利文(かたおか としふみ)氏

東京大学教育学部 教育心理学科卒業
現在の所属部署は、コンテンツ制作局 第2制作センター・社会 クローズアップ現代班

■経歴

ドキュメンタリーディレクターとして 30年以上ものづくりや中国に関するNHKスペシャル・クローズアップ現代を制作。
NHK史上初のディレクター兼務の解説委員に就任(2021年まで)、NHKスペシャル・シリーズ「メイド・イン・ジャパン 逆襲のシナリオ」、「ジャパンブランド」では制作に携わりながら、スタジオにも出演した。
一方で、取材者目線で書いたナレーションを自らの声で読む一人称目線のドキュメンタリーを追求。ソニー元会長の出井伸之氏を取り上げた「このままじゃあ終われない~出井伸之と“やめソニー”たちの逆襲」、京セラ創業者の稲盛和夫氏を取り上げた「ジャパンブランド 小さな組織が世界を変える」、
新半導体メーカー・ラピダスを取り上げたNHKスペシャル「1兆円を託された男 ニッポン半導体 復活のシナリオ」などでそれを実現してきた。



今後もオープンイノベーションフィールド多摩 八王子館では多摩地域の中小企業の皆様にとって有益な情報を届けてまいりますので、足をお運びください。


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